ジェームズ・マンゴールド監督、『名もなき者』ティモシー・シャラメのパフォーマンスを絶賛!冒頭のライブシーンから「特別な作品になる」と確信

ジェームズ・マンゴールド監督、『名もなき者』ティモシー・シャラメのパフォーマンスを絶賛!冒頭のライブシーンから「特別な作品になる」と確信

ティモシー・シャラメが若き日のボブ・ディランを演じる映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2月28日公開)のジャパンプレミア試写会が2月3日、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて開催。来日したジェームズ・マンゴールド監督が、日本最速上映の舞台挨拶に登壇した。

【写真を見る】通訳しやすいところでコメントを区切り、通訳さんに「お願いします」のジェスチャーをするマンゴールド監督
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『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)、『フォード vs フェラーリ』(19)の監督、ジェームズ・マンゴールドがティモシー・シャラメを主演に迎え生み出した本作の舞台は60年代初頭、後世に大きな影響を与えたニューヨークの音楽シーン。当時19歳だったミネソタ出身の一人の無名ミュージシャン、ボブ・ディランが、時代の寵児としてスターダムを駆け上がり、世界的なセンセーションを巻き起こしていく様子を描いている。

先日の第97回アカデミー賞ノミネート発表では作品賞をはじめ、監督賞(ジェームズ・マンゴールド)、主演男優賞(ティモシー・シャラメ)、助演男優賞(エドワード・ノートン)、助演女優賞(モニカ・バルバロ)、脚色賞(ジェームズ・マンゴールド、ジェイ・コックス)、音響賞、衣裳デザイン賞の8部門にノミネートを果たしており、日本に先駆け公開された各国で音楽ファン、映画ファンが熱狂中だ。

上映前のステージに登場したマンゴールド監督は「日本は映画のコミュニティがとても熱い。特に映画のシーンは活き活きとしているのを知っているし、音楽のシーンも熱い。さらにフォークシーンも盛り上がっているのも知っているので、日本でこの作品を分かち合えることをとてもうれしく思います」と本作と日本の映画ファン、音楽ファンとの親和性に触れ、多くの人に受け入れられることを期待していると笑顔。

若き日のボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメを大絶賛
若き日のボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメを大絶賛

本作の製作にはボブ・ディラン本人も協力しており、「ボブとは長い時間を過ごしました」としみじみ。どのようなやりとりをしたのかとの質問には、「僕がリサーチをして書いた脚本を気に入ってもらい、会おうと言われました。実際に会っていろいろなことを学びました」と振り返る。ディランに関する書籍は数多く出版されているため、「(それらの書籍から)多くのファクトを拾うことは可能」とのこと。しかし、実際にディランとのやりとりで話した中身は世に出ている書籍には書かれていない貴重なものばかりだったそうで、「曲を書いた場所や時間帯、その時どんな気持ちがしたのか、誰がいたのか、その雰囲気はどんなものだったのか」など、実際に本人からしか聞き出せない細かい事実をたくさん教えてもらったと感謝していた。

映画を作るにあたり、ディランからの特別なリクエストはなかったそう。「自分が書いた脚本やアイデアに関しての感想はたくさんくれました。でも、『ここが抜けているよ!』みたいなことは言わない。むしろ、たくさん(情報を)付け加えてくれて、助けてくれました」とニッコリ。劇中にはディランの名曲がたくさん登場するが、たとえば6分の長さの楽曲「Masters of War」はフル尺では流せないとマンゴールド監督が悩んでいると「大丈夫。ライブでも全部歌っていないから」とアドバイスしてくれたと明かし、観客が笑い出す場面もあった。

日本の映画ファン、音楽ファンは「気に入ってくれるはず!」と期待を込めていた
日本の映画ファン、音楽ファンは「気に入ってくれるはず!」と期待を込めていた

シャラメについては「ティミーとこの作品を作ろうと決めたのは2019年。最初に彼に言ったことは『ギターを買って!』でした」とニヤリ。それからのシャラメはずっと役に向き合っていたとし、「映画を観ればティミーがどれだけの思いを費やしたのかは明らか。僕が言葉を尽くすまでもありません」と大絶賛。コロナ禍も他の作品の撮影中もボブ・ディランになるためのアプローチを模索しているのを目にしていたとし、「こういう役で重要なのは音楽が人物の一部であること。彼ら自身が音楽そのものでもあることが、演じる上で必要になってきます。そういう意味で言うと、ティミーは完全に自分のものにしていました」と太鼓判。それが明らかになるのは冒頭の歌唱シーンだそうで、「あれは撮影開始から1週目で撮ったシーン。ライブでのパフォーマンスですが、このシーンを観ただけで特別な作品になると確信しました」と胸を張り、「とてもすばらしいので注目してください!」と冒頭からおすすめとアピール。シャラメの歌声を聴いた瞬間にワクワクしたというマンゴールド監督は、「自分の作品で役者が空間を埋めてくれるような広がりを見せてくれた時は、すごくホッとするものです」とシャラメの仕上がりぶりに、撮影序盤から感動していたことを笑顔で振り返っていた。


観客にも拍手を送るマンゴールド監督
観客にも拍手を送るマンゴールド監督

日本で最初に本作を観る観客に向けて「映画を観る前に、クドクド話すほどダサいことはない(笑)」と切り出したマンゴールド監督は「いまは食事を振る舞う前のシェフのような気分。早くおいしく召し上がっていただきたいので、あまりしゃべらずにいたいと思います」と笑顔。じっくり堪能してほしいと呼びかけ、大歓声と大きな拍手を浴びながらステージを後にした。

取材・文/タナカシノブ

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