【第97回アカデミー賞】『ANORA アノーラ』が作品賞など5冠で頂点に!ショーン・ベイカー監督はW・ディズニーに並ぶ偉業
現地時間3月2日に行われた第97回アカデミー賞の授賞式で、ショーン・ベイカー監督の『ANORA アノーラ』(公開中)が作品賞と監督賞、主演女優賞(マイキー・マディソン)、脚本賞、編集賞を受賞。ユーラ・ボリゾフがノミネートされた助演男優賞を除き、ノミネートされた6部門中5部門に輝く快進撃を見せた。
ベイカー監督にとって長編第8作となる本作。ニューヨークでストリップダンサーをしながら暮らすアノーラ(マディソン)は、職場でロシア人の御曹司イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会い“契約彼女”に。贅沢三昧の末にラスベガスの教会で衝動的に結婚するのだが、息子が娼婦と結婚したと聞いたロシアの両親は猛反対。結婚を阻止すべく、屈強な男たちを息子の邸宅へと送り込んでくるのだが…。
昨年行われた第77回カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドールに輝き、賞レースの有力コンテンダーとしていち早く名乗りを挙げると、前哨戦の第一段階といえる各地の批評家協会賞を続々と受賞。第82回ゴールデン・グローブ賞ではノミネート止まりとなったものの、ブロードキャスト映画批評家協会賞とアメリカ製作者組合賞を立て続けに連勝し勢いを取り戻すと、一気に2024年の頂点へと上り詰めた。
パルムドール受賞作のアカデミー賞作品賞受賞は、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(19)以来5年ぶりで、史上3作目。また、『逆転のトライアングル』(22)と『落下の解剖学』(23)と、3年連続で作品賞に候補作を送りだした北米配給のNEONにとっても『パラサイト 半地下の家族』以来の快挙となった。
今回アカデミー賞に初めてノミネートされたベイカー監督。自身が対象となっていた作品賞と監督賞、脚本賞、編集賞の4部門をすべて受賞したことで、個人での同一年の受賞数では第26回のウォルト・ディズニーに並んで歴代最多タイ。主要部門を含めての受賞は史上初、見事に歴史的偉業を成し遂げた。なお、過去に作品賞と監督賞、編集賞の3部門を制したのは『タイタニック』(97)のジェームズ・キャメロン監督のみ。
大混戦の主演女優賞を受賞したマイキー・マディソンは、2013年頃から女優としてのキャリアをスタートさせ、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)や『スクリーム』(22)などに端役として出演。本作で100を超える映画賞でノミネート・受賞を果たし、同部門では歴代9番目の若さとなる25歳342日でのオスカー獲得を果たした。
文/久保田 和馬