【第97回アカデミー賞】エイドリアン・ブロディが22年ぶり2度目のオスカー!『ブルータリスト』が主演男優賞・撮影賞・作曲賞の3冠
現地時間3月2日に行われた第97回アカデミー賞の授賞式で、作品賞など10部門にノミネートされていた『ブルータリスト』(公開中)が主演男優賞と撮影賞、作曲賞の3部門に輝いた。
本作は、第二次世界大戦下にホロコーストを生き延び、アメリカへと渡ったハンガリー系ユダヤ人建築家ラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)の30年にわたる数奇な半生を描いた人間ドラマ。ペンシルベニアで新たな生活を始めたラースローは、裕福な実業家のハリソン(ガイ・ピアース)に認められ、礼拝堂の設計と建築を依頼される。しかしそこに多くの障害が立ちはだかることに。
大混戦といわれた主演男優賞を、前哨戦のゴールデン・グローブ賞に続いて制したエイドリアン・ブロディは、29歳で同部門史上最年少受賞を果たした『戦場のピアニスト』(02)以来、22年ぶりのノミネートで2度目の受賞。史上11人目の同部門複数回受賞を達成した。直前に行われた重要前哨戦のアメリカ俳優組合賞では『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(公開中)のティモシー・シャラメに敗れ、シャラメがブロディの最年少受賞記録を更新する可能性が囁かれていたが、自らの受賞をもってそれを阻止。
壇上に上がりオスカー像を受け取ったブロディは「戦争や組織的な抑圧、反ユダヤ主義や人種差別、他者への偏見など、長く残るトラウマを代弁するために、私は再びここにいます。それは現在進行中の闘いであり、人々が仲間はずれにされたり、部外者のように扱われたりしないよう、尊重されることを切望しています」と、たっぷりと時間を使って渾身のスピーチを披露した。
また、撮影賞を受賞したロル・クロウリーと作曲賞を受賞したダニエル・ブルンバーグは、共に初ノミネート初受賞。オスカーも認めた演技と映像表現、そして荘厳な音楽を劇場環境で味わうことができるこの機会に、215分に及ぶ壮大な物語の世界へ没入してみてほしい。
文/久保田 和馬