松坂桃李と竹野内豊の“最低で最高”の演技に、鬼才監督も自信満々!

映画ニュース

松坂桃李と竹野内豊の“最低で最高”の演技に、鬼才監督も自信満々!

沼田まほかるの同名ベストセラー小説を映画化した『彼女がその名を知らない鳥たち』が公開初日を迎えた10月28日、東京・新宿バルト9で舞台挨拶が行われ、主演の蒼井優と阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊と、白石和彌監督が登壇した。

本作は、15歳年上の男・陳治に頼った自堕落な生活を送る女・十和子を主人公に、下衆で貪欲な男女が織りなす恋愛ミステリー。数年前に別れた黒崎を忘れられない十和子は、あるとき彼に似た面影を持つ男・水島に出会い、惹かれていく。そんな折、黒崎が失踪してしまったことを知らされる。その失踪に十和子に執拗なほどの愛をぶつける陳治が関与しているのではと感じた彼女は、不安に駆られ始めるのだった。

阿部とともにダブル主演を務めた蒼井は「本作が公開になって嬉しいです」と笑顔を見せると、自身が演じた主人公の不安定な心情を演じる上で「自分勝手なように見えて、主体性のない女性なので、3人の男性それぞれに対して違った面を見せていけるように演じた」と、役作りについて明かした。

劇中では、阿部、松坂、竹野内の3人が演じる三者三様の男性と関係を持つ主人公を演じた蒼井。それぞれの男性によって、役柄の印象だけでなく、ロケ地の雰囲気まで異なっていたようで「気持ちの入り方がそのたびに変わった。まるで同時に3本の映画を撮っているような感覚になりました」と、撮影を振り返った。

一方、十和子を取り巻く3人の男性陣は、いずれもその役柄の“最低さ”に苦労した様子。「自分の役は共感できたら終わりだ」と完成披露試写会で語っていた松坂は、この“共感度ゼロ”の水島を演じるにあたり「後半には憎悪が湧くくらい薄いキャラなので、前半と後半で落差が出るように演じた」と語り「観ているうちに薄いキャラだとわかってくるはずです」と、自分が演じたキャラクターの最低さに笑みを浮かべた。

また、今まで演じた経験のないような最低なキャラクターに挑んだ竹野内は「どういうイメージでやればいいのかと監督に訊ねたら、“最低で最高だったらそれでOK”と言ってもらった」とのエピソードを明かす。すると白石監督は「黒崎は擁護のしようのないクズなんです」とバッサリ。そして「台本では描ききれない黒崎のいろんな感情を、竹野内なら表現できるのではと思って配役した」と竹野内に期待していたことを明かした。

これまで『凶悪』(13)や『日本で一番悪いやつら』(16)など“最低”なキャラクターを真っ向から描いてきた白石。撮影中には、モニターを見ながら笑っていた姿が目撃されていたとか。「キャストのみなさんが、こちらの想像を超える斜め上の芝居をしてくれるので、いいものが撮れていると実感した。そういうとき、笑えて笑えてしょうがないんです」と、日本映画界の新たな鬼才として期待されている白石が、思わず笑顔を見せるほど白熱した演技合戦が楽しめる作品に仕上がっている。【取材・文/久保田和馬】

関連作品