『はいからさんが通る』が愛され続ける理由は“朝ドラとの共通点”。大和和紀が語る!
海老茶袴にブーツ姿のはいからさん、花村紅緒の波乱の恋と人生を描いた少女漫画の金字塔「はいからさんが通る」。連載終了から40年を経た今もなお新たなファンを増やし続け、このたび劇場版アニメーション『はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜』(11月11日公開)、『はいからさんが通る 後編 〜東京大浪漫〜』(2018年公開)となって2部作でスクリーンに登場する。原作者の大和和紀にインタビューし、制作当時の裏話や、朝ドラにも通じる本作の持つ普遍的な魅力について話を聞いた。
大正時代を舞台に、じゃじゃ馬娘の紅緒が繰り広げる、笑い上戸のイケメン・伊集院忍少尉との運命の恋。そしてあらゆる苦難にも負けず、紅緒が持ち前の明るさで自らの道を切り開いていく姿を描く物語。今回の劇場版では、紅緒を早見沙織、忍を宮野真守が演じるなど、豪華声優陣が顔を揃えたことでも話題だ。
原作は1975年から1977年まで「少女フレンド」で連載され、シリーズ累計1200万部を突破する大ヒットコミック。大和は、連載当時の人気をこう振り返る。「すぐに人気に火がついた実感はありました。ファンレターやバレンタインのチョコレートも山のように届きましたから(笑)。今とは時代も違いますが、重版100万部がかかったり」と連載当初から爆発的人気を得たそう。「連載終了から40年経った今でも、重版がかかっているそうです」と、まさに誰もが知る国民的人気コミックとなった。
「男女を問わず、小学生や中高生、大学生や社会人。幅広いファンの方がいらっしゃいました」とのことで、南野陽子主演の実写映画化やテレビアニメ化など、メディアミックスも実現。そしてこの度、初めて物語のクライマックスまでをアニメ化する劇場版が登場することとなった。年齢や時代、性別を問わず愛される理由について、大和は「主人公の行動力」と分析する。
「今はノベライズ化もされているのですが、小学生の女の子から“紅緒さんの一途に人を想う姿や、行動力にすごく惹かれます”という感想をいただくこともあります。さらに時代ものですから、紅緒が経験する事件や出来事も大きなもの。朝ドラなどもそうですが、時代のうねりを渡り、まっすぐに自分の道を決めて行動をしていく女性というのはとても魅力的なんだと思います」。
その言葉通り、ヒロイン・紅緒の姿が凛々しく、明るく、たくましい。さらに本作をパワフルにしているのが、胸が詰まるほどの恋を経験し、女性の社会進出が難しい時代に道を切り開いていくヒロインの姿がギャグ満載に描かれることだ。大和は「物語はとてもシリアスなんです」と話すが、だからこそ軽妙な物語運びが重要となり、「ギャグを入れたことで、読者にとっても読みやすくなったのかもしれません。王道の物語プラス、ギャグがありました」とシリアスと笑いのバランスが大きな魅力だ。
スタートラインは「物語の骨子としたのは、初恋が結ばれるという普遍的なもので、戦争があって、最後には関東大震災を入れようということでした」とのこと。その後は「その頃は週刊で、週に20ページくらいを毎週描いていました。思いついたまま、そのときのパワーを注ぎ込んでいる状態でしたね」とフルパワーで大奮闘。「大変な労力がいる作業なので、仕事場に笑いがないと辛いんです(笑)。アシスタントさんと話すときも、ギャグっぽく話したりしていました」と劇中のギャグや笑いは、制作現場としても大事なエッセンスだったようだ。
「ギャグのもとは、落語、お笑い、ラジオの深夜放送」とニッコリ。「仕事場はいつも修羅場状態でしたが、私もすごく楽しんで描いた作品です。読者の方にもとても楽しんでいただけて、ファンレターもたくさんいただきました。そのファンレターが一番の私の力になりました」とファンの声を原動力にしている大和。「自分も楽しんだ作品が、今でもこうして劇場版アニメになるなど変わらずに愛していただき、皆さんに楽しんでいただけるなんて。本当に幸せな作品だと思っています」。おおらかで太陽のように明るい紅緒が、必ずや今の日本を元気にすることだろう。【取材・文/成田おり枝】