アカデミー賞の視聴率上昇は、不景気による現実逃避も大きな要因
3月7日に開催されたアカデミー賞のアメリカの視聴率が、過去5年で最高を記録。昨年の3630万人から4130万人に増加したと言われている。その背景にはいくつかの要因があるが、多くのメディアは、全米歴代興行成績がナンバー1となり、多くの国民が鑑賞している『アバター』が作品賞にノミネートされたことで人々の興味をそそったこと。『ハート・ロッカー』と一騎打ちという緊迫感とともに、『アバター』受賞に大きな期待感があったことを、主な理由に挙げている。
それに加えて米ウォール・ストリートジャーナル紙は、“不景気”という違う視点から、視聴率上昇の要因を挙げている。先日、ロイターが発表した調査結果で、世界中の5人に2人が、映画で現実逃避をしていることが明らかになったのは記憶に新しい。特に2008年のリーマン・ショック以来、未曾有の景気後退に悩まされているアメリカでは約51%、つまり半分以上の人々が映画で現実逃避をしているという結果だった。つまり、アメリカ人はなるべくお金を使わずに非現実を体験できる方法を模索しているというわけだ。
となればテレビ鑑賞がお手軽な方法になるはずだが、実は、昨今の米テレビ業界は視聴率の低下が下げ止まらずに苦戦している。その中にあって、2月に公開された「スーパーボール(アメフト)」の視聴率が過去最高に、そして「バンクーバー冬季オリンピック」も4年前の冬季オリンピックより上昇している点を指摘。これらの番組に共通するのは、人々に夢と感動を与え、華やかで、かつ非日常的なお祭り的ビッグ・イベントであることで、アカデミー賞もしかり。人々が非現実の世界を求めた結果、アカデミー賞の視聴率も上昇したという見解を示しており、とても興味深い。【NY在住/JUNKO】
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