NGT48卒業の北原里英が拉致監禁!『サニー/32』白石和彌監督の壮絶な現場とは?
アイドルグループ「NGT48」からの卒業を発表した“きたりえ”こと北原里英が、『凶悪』(13)や『彼女はその名を知らない鳥たち』(17)の白石和彌監督作『サニー/32』(2月17日公開)で女優として覚醒。今回も拉致監禁や少年犯罪など、とことん“凶悪”なモチーフに挑んでいる白石組の中で北原が見せた破壊力がすさまじい!北原と白石監督にインタビューし、「とことんヤバかった」という現場の撮影秘話を聞いた。
11歳の女児が同級生をカッターナイフで殺害。その衝撃的な事件から14年後、24歳の中学校教師・藤井赤理(北原里英)が2人の男たちに拉致監禁される。2人は例の事件の加害者女児・通称“サニー”のカルト的信者だった。
脚本を手掛けたのは『凶悪』でも白石と組んだ脚本家・高橋泉で、2004年に長崎で起きた佐世保小6女児同級生殺害事件から着想を得ている。
北原はもともと白石監督作『凶悪』が大好きだったということで、白石組への参加を大喜びしたそう。「どちらかというとハッピーエンドな映画よりも暗めのエンタメ映画の方が好きで、『凶悪』を観た時、いい意味で精神的に疲れ、心にズーンと残る感じがすごいと思いました。それ以来、ピエール瀧さんとリリー・フランキーさんが怖くなってしまうくらい衝撃を受けました」。
白石監督は北原の第一印象について「顔が派手だなと思いました」と言うと、北原はアハハと大笑いする。白石は続けて「だからはっきり表情が出やすい」と補足。
「何か嫌いなものはありますか?と聞いたら『ゴキブリです』と言われたので、『ゴキブリが好きなつもりで話をしてみてください』という無茶ぶりをしました(笑)。それを見て、面白いことができそうだとワクワクしました」。
華やかなスポットライトを浴びてきた北原が、拉致監禁されるヒロインに挑む。相当な覚悟が必要だったのではないかと思うが、北原は「白石組に憧れていたので、勇気はいりましたが楽しみでした。私もどうなるんだろう?というワクワク感の方が大きかったです」と期待に胸を弾ませて現場入りしたそうだ。
白石監督は北原のアイドルとしての経験を踏まえて、赤理役にキャスティングしたと言う。「僕がやってきたような世界観にはまだ染まっていない真っさらなキャンバスだからこそ描きようがあると思いました。脚本を読んだ彼女から『この役をどう演じていいのか自信がありません。インする前にやっておくべきことはありますか?』と聞かれたので『特にないです。アイドル活動に邁進してください』という話はしました」。
ネット上で“犯罪史上、もっとも可愛い殺人犯”として神格化されていくサニー。監禁された赤理はサニーとして教祖のように崇められ、狂信的信者の数名と共同生活を送っていく。白石監督は北原とサニーとの類似点や共通点を見出しながら、彼女を極限まで追い詰めていった。
「僕はアイドル論を語れるほど詳しいわけじゃないけど、よく言われているのは、アイドルという虚像がいまは実体化されてきているということです。そういう意味で虚像は偶像になっていき、そこが面白いところでもある。だからアイドルである北原さんをどう活かしていくかを考えました。北原さんがいま置かれている立ち位置と役柄をシンクロさせた方がやりやすいかなと思ったからです」。
北原自身は「サニーは自分と似ているというか、理解できる部分もありましたが、わからない点も多く、果たして自分がサニーのように神に近い存在になれるのかどうかが心配でした」と述懐。
「私はAKB48グループとしてアイドルを10年やってきましたが、もともと『センターになりたい!』というタイプではなく、自信が持てないアイドルだったので、そのことを後悔したこともありました。でも、3年前に白石監督と初めてお会いしてからいろんなことがあり、ちょうど自分の卒業するタイミングでこの映画が公開されることになって、ものすごく運命を感じたんです。だからこの映画を自信に変えて、外に飛び出していけたらと思っています!」。
取材・文/山崎 伸子