新星・阪本一樹と芸歴20周年の須賀健太の名コンビが最高!『サイモン&タダタカシ』秘話

インタビュー

新星・阪本一樹と芸歴20周年の須賀健太の名コンビが最高!『サイモン&タダタカシ』秘話

第36回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)でジェムストーン賞を受賞した小田学監督が、PFFスカラシップ作品『サイモン&タダタカシ』(3月24日公開)で長編監督デビュー。本作でW主演を務めたのは、新星・阪本一樹と、芸歴20周年を迎えた須賀健太だ。同じ事務所の後輩・先輩でもある2人は、本作の撮影を通じて心から意気投合したようだ。

工業高校3年生のサイモン(阪本一樹)は、親友のタダタカシ(須賀健太)に密かな想いを抱いているが、タダタカシはまったくそのことに気づいていない。ある日、タダタカシは“運命の女”に出会うべく、サイモンを巻き込んで彼女を探す旅へと繰り出す。

阪本は、第28回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでフォトジェニック賞を受賞し、高校卒業を機に上京。映画初出演&初主演作となった本作で、同性への叶わぬ恋心に悶々とする難役にトライした。いまや“若きベテラン”の風格をまとう須賀は、“ジェムストーン(宝石の原石)”の阪本と小田監督にとって、とても心強い存在となったに違いない。

内気で控えめなサイモンと、恋に暴走する破天荒なタカシ。陰と陽のキャラクターだが、2人の素顔もどちらかというと演じた役柄に近いそうだ。阪本は「須賀さんに初めてお会いした時はすごく緊張していて、なにを話していいのかわからない状態でした」と言うが、須賀は彼の第一印象について「ああ、かわいいな」と初々しさを感じたとか。

サイモンとタダタカシの旅は、中盤からまさかのSFテイストを帯びていき、奇想天外なクライマックスへと導かれる。須賀は小田監督から並々ならぬ熱意を感じたそう。「監督ご自身、商業映画を撮るのは初でしたが、本作に対しての思い入れがものすごく強かったです。たぶん脚本を書いた時点で、どういう画にするかというビジョンをしっかりお持ちだったのではないかと」。

阪本も「監督のイメージしているものがはっきりわかったので、僕はそれに近づけるために稽古を積んでいきました」と語る。同性の親友を好きになるという役柄については「特に抵抗はなかったです」とのこと。

「とにかく須賀さんを好きになろうとしました。須賀さんのことを知らないとなにもできないと思ったので、日常的な会話からコミュニケーションをとっていこうと心がけました」という阪本。須賀は「そんなことを思っていたなんてつゆ知らず。自分からは全然話しかけてくれなかったし」と、阪本のシャイな部分をいじると、阪本から思わず笑みがこぼれる。

脚本に沿って順撮りされたことが功を奏し、サイモンと阪本の心の成長がオーバーラップしていったという須賀は「僕がこんなことを言うのもなんですが」と前置きしたあと「映画は2人のシーンから始まり、最後も2人のシーンで終わります。短い時間でしたが阪本くんと一緒にやってきて、彼がすごく変わったのを感じました。僕は一番近くで見ていたので特にそう思います」。

阪本も「最初に須賀さんとやったシーンは、緊張しすぎてぎこちない部分がありました」と苦笑いし「何日か経って川辺に行くシーンを撮影する時、すごく自然にしゃべれた自分に気付いて。その時、須賀さんも『いいよ』と言ってくださって、すごく自信になりました」とうれしそうに目を輝かせる。

小田監督は阪本について「僕は映画初監督、彼は初主演だったので共に成長できた」と、同志のような思いを語り、須賀については「やはりキャリアを積み重ねてきた人だと感動した。想像以上のお芝居をしてもらえた」と賛辞を送っている。

須賀自身は、デビュー20周年というキャリアについて「僕の仕事は“役者”と言えばいつでも“自称・役者”になれてしまうので、20年と言ってしまうのはどうなのかと。僕にとっては、いつのまにか20年という感じです」と恐縮する。

彼が出演してきた「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズには、まさに俳優・須賀健太の成長ぶりが投影されているが、20年のキャリアにおいては、思い悩んだ時期もあったそうだ。

「高校1、2年のころは仕事が少なくて、そのことが苦痛でした。子役からやっているとそういう時期があるとは聞いていましたが、そのころが一番しんどかったです。以前からやりたかった舞台にそのタイミングで挑戦させてもらえたことが、いい機会だったと思います」。

阪本は今後の抱負について「これからが大事だと思うので、こういう作品に出たいということよりは、目の前のことをしっかりとやっていきたい」と語ったあと「須賀さんから得たものはたくさんあります。現場のムードメーカーで、すごいリーダーシップがある方なので、そういうところを見習いたいです」とリスペクトする。

阪本は、尊敬する俳優に、同じ事務所に所属する妻夫木聡の名を挙げているが、須賀は「すぐに妻夫木さんになれるわけがないから、その間に“須賀健太”を入れて」とツッコむ。阪本が「はい。本当に尊敬しています。今後なにかあったら、相談できるような先輩です」とうなずくと、須賀は「待ってます!」と笑顔で締めくくった。

取材・文/山崎 伸子

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