「どんな役でも特別な体験」ジェフ・ゴールドブラムが明かす熱烈な“ウェス・アンダーソン愛”
近未来の日本を舞台に、“ドッグ病”に感染した犬たちが隔離されているゴミだらけの島“犬ヶ島”に愛犬を捜しに来た少年と、彼を手助けする5匹の犬たちの冒険を描いたウェス・アンダーソン監督の最新作『犬ヶ島』(公開中)。劇中で5匹のヒーロー犬の1匹、デュークの声を担当したジェフ・ゴールドブラムが来日し、アンダーソン監督の魅力や日本映画への想いを明かした。
「ウェスの映画に出演できるというのは、どんな役でも僕にとっては特別な体験なんだ」と、これまで『ライフ・アクアティック』(04)と『グランド・ブダペスト・ホテル』(13)でタッグを組んできたアンダーソン監督への絶大な信頼をうかがわせた。ジェフが演じるデュークは、女主人に大切にされ快適な暮らしを送ってきた過去を持ち、大のゴシップ好き。様々な噂を仕入れては仲間の犬たちを驚かせるというユニークなキャラクターだ。
「5匹はまさに“人間の友”と呼べる存在。アタリが現れて、なにも疑うことなく彼を助けるために一緒に冒険に出るというのは、アタリが正義であると感じ取っているからなんだ。正しいことをしたい、という意思の表れだよ」と、彼が演じた犬の心情を代弁する。
そしてジェフは「『怒りの葡萄』の中でヘンリー・フォンダはこう言う。『子どもが困っている時には、俺はそこにいる』。そして『カサブランカ』でハンフリー・ボガート演じるリックは、世の中すべての人がうまくいってほしいというロマンチストな一面を持っている。そういう精神を、ウェスは持っている」と次々と名作映画を例に挙げながら、アンダーソン監督を褒めちぎった。
また本作の劇中には、随所に黒澤明監督をはじめとした日本映画へのオマージュが捧げられている。頻繁に来日を果たすなど、自身も大の日本好きだと語るジェフに、日本映画の思い出を訊ねてみた。「10年ほど前のことだ。ポール・シュレイダー監督から、小津安二郎監督の『東京物語』を観るように勧められたんだ」と、アンダーソン監督も敬愛する小津監督の名作を真っ先に挙げたジェフ。
「シュレイダー監督によると、世界の映画史で5本の指に入る映画だというのに、僕は観たことがなかったので、すぐにソフトを買って観たら、非常にすばらしい映画だった。1度観て、すぐに2度目を観てしまったほどだ」と日本が世界に誇る名作に心酔したことを明かす。さらに「黒澤監督の作品では『乱』が一番好きなんだ。あと伊丹十三監督の『タンポポ』も映画館で観て本当にすばらしいと感じたよ」と熱弁をふるう。
また子どものころには「ゴジラ」シリーズにハマっていたというジェフは「ウェスが本当にたくさんの日本映画を知っているから、彼に推薦してもらって、もっとたくさんの日本映画を観てみるよ!」と、本作を通して日本映画への熱が高まったことをうかがわせた。それをきっかけに、40年以上のキャリアを誇る名優ジェフの熟練した演技にさらに磨きがかかることを期待したい。
取材・文/久保田 和馬