人を殺す理由を菊地凛子が真剣に検討。その理由は?
9月11日(土)より公開の『ナイト・トーキョー・デイ』は、殺し屋として闇の世界に生きる女と、彼女のターゲットになった男の禁断の愛を描いたラブストーリー。
そんな本作で、昼間は築地の市場で働き、夜は殺し屋として暗躍する主人公リュウを演じるのが『バベル』(06)をはじめ、数々の話題作に出演し、『ノルウェイの森』(12月11日公開)の公開も控えている菊地凛子だ。今回は、この難役を見事に体現した彼女が、役柄に対するアプローチ方法や作品の魅力について大いに語ってくれた。
役を演じる際は、直感から入り込むことが多いという菊地。だが今回は殺し屋という、これまで経験したことのない役柄だけに、リアリティの追求には苦労したとか。
「人を殺すという考え方は、リュウの中で大部分を占めている要素だから、まずはそれを理解したかったのですが、実際にそんな経験ないじゃないですか。だから、自分なりに人を殺す理由を色々模索して、『もし家族が傷つけられたり、殺されたりしたら、相手(加害者)を殺してしまうかもしれない』という考えに行き着きました。それをリュウの心理に置き換えることで、ようやくキャラクターにリアリティを持たせることができました」。
劇中では、彼女の流暢な英語も堪能できるのだが、日本語のシーンとは演技においても違いがあるのだろうか?
「日本語って、主語がなくても会話が成立したり、ひとつの言葉にもいろんなニュアンスがあったりしますよね。でも英語は、会話の方向性がはっきりしていて、感情もストレートに伝えやすいんですよ。リュウは目的がはっきりしているキャラクターだから、英語の方が感情を表現しやすかったですね」。
本作は『死ぬまでにしたい10のこと』(03)、『エレジー』(08)を手がけた女性監督イザベル・コイシェが、日本文化を独自のタッチで描いたことでも話題の注目作だ。本作への出演で、菊地は東京という街の新たな一面に気付いたという。
「本作は、イザベル監督ならではの危険で野生的な美しさが全編からあふれ出てますね。女性特有の弱さや繊細さも詰まっていて、詩的な世界観が楽しめる作品です。それと、原題が『MAP OF THE SOUNDS OF TOKYO』っていうくらい、この映画は音にこだわりのある作品で、築地の市場から下北沢のラーメン屋、新宿の街頭まで、いろんな街並みが劇中に出てくるんですけど、どの場所にも、その街特有の音があるんですよ。今まで意識してなかったけど、この作品に出演して、東京って音にあふれた街なんだなあって改めて気付かされました」。
また劇中には東京という街が独創的に、時には奇妙にさえ見えるシーンが多数登場するのだが、それらの演出についてはどう感じていたのだろうか?
「監督とは、よく一緒に食事や買い物に行ったんですけど、どこに行くにしても私たちとは見ているポイントが違うんです。タクシーに乗った時は座席にレースがかかっていることに驚いたり、運転手さんから飴をもらってめちゃくちゃ喜んだり。私たちからすれば当たり前のことが、彼女にとってはとてもユニークな出来事だったんでしょうね。そういった日本の文化に対する好奇心や、理解できないミステリアスな部分が集約されて、映像の中に出てきたんだと思います。映画って虚構の産物じゃないですか。難しく考えずに、イザベル監督の想像力の豊かさを一緒に楽しんでほしいですね」。
菊地凛子とイザベル・コイシェ監督という、世界が注目する気鋭ふたりが放つ意欲作『ナイト・トーキョー・デイ』。本作を観れば東京という街の新たな魅力を、きっと体感できるはずだ。【トライワークス】