内山理名が『遠くの空』で感じた、お芝居をしていて一番嬉しい瞬間とは?

インタビュー

内山理名が『遠くの空』で感じた、お芝居をしていて一番嬉しい瞬間とは?

内山理名が、韓国の実力派俳優キム・ウンスと共演したラブストーリー『遠くの空』(9月25日公開)で、運命的な出会いに翻弄されるヒロイン役を好演。韓国語のセリフにも初挑戦し、年の離れた上司への思いに揺れ動く心のひだを表現した。そんな内山が、感情の起伏を示したチャートのような“感情の表”まで作ったという井上春生監督の綿密な演出について語ってくれた。

内山が扮するのは、今は亡き日本人の父親と在日韓国人の母親に日本で育てられたヒロイン・松木美江。彼女が、職場で韓国人の上司・柳正培(ユウ・ジョンベ)と運命的に出会い惹かれ合っていく。本作は、ラブストーリーを軸にしつつも、1980年に韓国で勃発した光州事変のエピソードも織り込まれた人間ドラマとなっている。

最初に脚本を読んだ時、内山はかなり戸惑いを覚えたという。「すごく重いテーマの作品だなと思って、びっくりしました。韓流ドラマは好きだけど、本作ではぜんぜん知らない韓国の部分が描かれていたので。でも、その代わりに、監督と常に話し合うことができたので、毎日楽しく撮影することができました」。

監督は、『音符と昆布』(08)の井上春生で、極めて細やかな演出を施したようだ。「本作はセリフも少ないし、解説や原作があるわけでもないので、常に気持ちを一緒にしておこうってことで、最初の話し合いで“感情の表”を作ったんです。今、ここでこういう段階だから、こういう気持ちの揺れ動きをしているとか、すごく細かいところを話し合いました」。

クライマックスのあるシーンでは美江の感情が高ぶり、静かに涙を流すシーンがとても美しいが、あのシーンについてはこう語る。「ドラマだと、ここで泣かなきゃいけないって、一生懸命に作って演じることが多いんですが、今回は無理がなかったんです。すごく話し合ってから演じたので、そこで涙が流れたところを本当にうまく切り取ってもらったというか。自分が感動して、その気持ちをちゃんと撮ってもらえるのは、お芝居をしていて、本当に嬉しい瞬間ですね」。

美江が父親世代の上司・柳に惹かれる気持ちは、共感できたのだろうか。「恋愛の部分で共感する部分はなかったのですが、『この人のことが知りたい。興味がある』とか、『もう一度この人に会いたい』と思う人という意味では理解できました」。では、美江と柳のような運命的な出会いを、内山は信じるのだろうか? 「信じています。お互いに呼び合うものがあるのかなって。運命とか必然とか言ってしまうと現実味がないけど、でも、ある気がします」。

本作に出演して、映画をもっとやってみたくなったという内山。「舞台もドラマも違う表現として好きですが、映画でしかできないことってあるんだなって思いました」。確かに、スクリーンで見る内山の自然体な表情は、奇跡のような物語に説得力を与えている。是非、ひと皮むけた内山理名を見に行ってほしい。【Movie Walker/山崎伸子】

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