オダギリジョーが“偉大な存在”との初タッグを振り返る!『宵闇真珠』公開
世界的撮影監督として90年代のアジア映画ブームを牽引した撮影監督クリストファー・ドイルが、長編監督デビューとなるジェニー・シュン監督と共にメガホンをとった『宵闇真珠』が15日に公開初日を迎え、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにて初日舞台挨拶が開催。劇中で異邦人の男を演じたオダギリジョーが登壇した。
本作は香港最後の漁村・珠明村を舞台にした幻想的な物語。太陽に当たると死んでしまうという奇病のために昼間は出歩くことができない孤独な少女は、ある時村はずれの丘の上にある、幽霊が出ると噂の廃屋に住み着いた異邦人の男と出会う。それをきっかけに少女は母親のルーツと、本当の自分を知ることになる。
1人で舞台挨拶に立つのは久しぶりだというオダギリは「僕らの世代からすると、クリストファー・ドイルとウォン・カーウァイのコンビはとても偉大な存在。なので、クリスから声をかけていただいたことがすごく嬉しかったし、驚きました」と本作のオファーをもらった時の心情を振り返る。そして、実際にドイルの演出や撮影方法を目の当たりにした感想について「大変だったというよりも、楽しかった」とにこやかに語る。
「ほとんどテストをすることがなく、しかも説明されることもあまりなかった。とにかく1回カメラを回して、少し変えていったり、撮影をしながら作り上げていくという感じでした」と独特の演出方法だったことをオダギリが明かすと、後ろのスクリーンにはオダギリと2人の監督が肩を組みあっている写真が映し出される。「覚えてますか?」と司会から訊ねられたオダギリは「もちろん覚えてないです」と茶目っ気たっぷりに答え、会場の爆笑を誘った。
またオダギリは、本作の劇中に流れる楽曲も提供。「クリスとよく飲みに行っていて、その時に『いま、なにやってる?』みたいな話になって『最近曲作ってるんです』と聴かせたら、使いたいみたいになった、飲み会のノリです(笑)」と提供の経緯を明かすオダギリ。会場にその楽曲「JellyfishSyndrome」が流れると「じっくり聴くようなものでもないですけどね」と恥ずかしそうに笑い、元々はジャズとして作った曲をリミックスして、ボーカルの声を加工してドラムやギターのように聴かせているなどの工夫を語るオダギリ。
最後にオダギリは、出演の経緯から撮影現場や作品完成までのすべてを総括するように「なにも最初から決まったものなどない、という感じの作品です。でも、それがおもしろさだと思います」と、憧れの存在であったクリストファー・ドイルとの充実した映画作りをまとめた。現在オダギリは長編監督デビュー作を準備中とのことで、同作にはドイルが撮影監督として参加している。強い絆で結びつけられた2人のタッグは、アジア映画界を大いに盛り上げてくれることだろう。
取材・文/久保田 和馬