玉森裕太「すべてをぶつけた」吉岡里帆とのラブシーンに全身全霊
Kis-My-Ft2の玉森裕太が、東野圭吾の同名ベストセラー小説を実写化した『パラレルワールド・ラブストーリー』(公開中)で約4年ぶりの映画主演を務めた。近年、ますます役者としての存在感に磨きをかけている玉森だが「ものすごく難しい役だった。経験したことのない役だし、初挑戦することばかり」と“役者・玉森裕太”史上、最大の難役となったという。「怒られて成長してきた。怒られるのはうれしいこと」というストイックな一面。そして「すべてをぶつけた」という大人のラブシーンまで、たっぷりと語ってもらった。
本作の主人公は、ある日突然、2つの世界に迷い込んでしまった崇史(玉森)。1つの世界は、愛する麻由子(吉岡里帆)と自分が恋人同士。もう1つの世界は、親友の智彦(染谷将太)と麻由子が恋人同士…。目が覚めるたびに変わる世界で混乱していく崇史の姿と、驚くべき真実を描くミステリーだ。
「僕は結構、自分に自信がないタイプ」
玉森が映画主演を務めるのは、『レインツリーの国』(15)以来約4年ぶりのこと。しかも大ベストセラー作家の東野作品の映画化とあって、「もちろんプレッシャーもありました。『僕も東野さんの作品に出られるんだ』という喜びもありましたが、緊張や不安のほうが大きかったです」と告白する。「それに僕は結構、自分に自信がないタイプなので、大丈夫かなあって」と苦笑いを浮かべるなど、引っ込み思案な一面も。
主演を任されたり、ステージで真ん中に立つことも多いが、その性格とはどのように向き合っているのだろう。「自己表現が上手ではないけれど、でもそのくせちょっと目立ちたいなと思っちゃう時もあって。つまりは、面倒くさい性格なんです(笑)。仕事をしている以上、なんらかの目標を作るようにはしています。“こういう見せ方をしたらどうだろう”、“こうあるべきではないか”といろいろと試行錯誤しながら、日々生きています」と目標に向かうことの喜びを実感している日々だという。「今回だって、『大丈夫かな』とも言っていられないですから。しっかりやらなきゃなと覚悟しました」と力強い眼差しを見せる。
「とにかく難しい役。初挑戦することばかりだった」
本作で演じた崇史は、2つの世界に翻弄され、苦悩していく役どころ。愛する人をめぐる嫉妬心に苛まれるなど、大人の男の葛藤を細やかな演技で体現した。ドラマ「リバース」「重要参考人探偵」など幅広い役柄に挑み、役者としても躍進している玉森だが、「僕は崇史のような経験をしたこともないですし、ものすごく怖いことだと思いました。演じている時も恐怖を感じていましたし、とにかく難しい役でした。いままでに経験したことがない役だし、初挑戦することばかり。課題がめちゃくちゃあるなと思いました」と大きなチャレンジだったと語る。
繊細な感情表現が必要となる役とあって、森義隆監督からは「役以上に自分という人間の内面と向き合ってほしい」と言葉をかけられたという。「そういったことをやったのも初めてでした。メモに箇条書きで“玉森裕太、28歳。どういう性格”と、自分で思い浮かぶままにどんどん書いていって。自分のいいところだけじゃなく、嫌なところも結構な量、書きましたよ。自分を見つめてみて、“そんなバカな”と思うこともありましたね(笑)。自分はどういう人間なのかと知る、いい機会になったと思います」と充実の表情。「今回気が付いて、意外だった自分の一面?それはちょっと恥ずかしくて、言えないです(笑)」。
「追い込まれるのは、うれしいこと。ジュニアのころから、怒られて成長してきた」
崇史の緊張や恐怖を引き出すために、森監督は「やたらSっ気が刺激されて、玉森くんにギリギリまでプレッシャーをかけた」とも話している。玉森は「森監督と僕の関係は、SとM」とニッコリ。「でも僕は追い込んでもらえることって全然、苦じゃないんです。最近、怒られることがなくなったな…とも感じていて。子どものころや学生時代、ジュニアのころもですが、いろいろな人に怒られて成長してきたなと感じているんです。誰かが怒ってくれるというのは、それだけ自分にエネルギーをかけてくれているということ。怒られなくなっちゃうと悲しいですよね」と成長の秘訣を吐露。「だから、怒られるとうれしくなっちゃう(笑)。追い込まれることも、それに近いかもしれないですね」。
難役を演じきり、役者としての新たな“武器”も得たという。「森監督からは、『引き込んでほしい』とずっと言われていました。お芝居って、出したり、発散したりするものだと思っていたんですが、『引き込んでほしい』と。ちゃんとできたかはわかりませんし、すごく難しくもありましたが、これも一つの武器になるんじゃないかなと思いました」。崇史の混乱の渦に、確かに観客は引き込まれていくはずだ。「今回の撮影ではものすごく集中できて、ずっと役のことを考えていました。それだけに撮影が終わったあとは、燃え尽き症候群のようになってしまって。“燃え尽き症候群”って、検索しました(笑)」。
「ラブシーンでは、すべての想いをぶつけた」
吉岡里帆演じる麻由子とのラブシーンも、玉森の大人の表情が見られるシーンとなっている。「ラブシーンが、麻由子への気持ちがピークに達するシーンだと思ったので、崇史の好きな想いをすべてぶつけました。もうその時は智彦のことは一切、考えていなかったですね。自分の欲だけ。すべての想いをぶつけました」という全身全霊のラブシーンも見逃せない。もしプライベートで親友と同じ人を好きになってしまったら、どうするだろうか?「僕は友情を裏切っても恋をとる、ということはないですね」とキッパリ。「だって、親友からでしょ…?絶対に、奪えません!」と友情に厚い面も見せていた。
取材・文/成田 おり枝