『チェブラーシカ』の原作者が中村監督の映画を絶賛「まるで生きているみたい!」
ロシアの国民的パペットアニメ『チェブラーシカ』(12月18日公開)の映画最新作が、27年ぶりに登場。オリジナルスタッフの協力の元、中村誠監督が、大きな耳を持つかわいいチェブラーシカとその仲間たちに命を吹き込んだ。そこで中村監督と、来日した「チェブラーシカ」の原作者であるロシア人の児童文学作家エドゥアルド・ウスペンスキーに、本作の製作秘話を語ってもらった。
南の国からロシアにやって来た小さな生き物は、起こしてもすぐに倒れてしまうことから、“バッタリ倒れ屋さん”という意味の“チェブラーシカ”と名付けられる。彼と、友人のワニのゲーナが、ある日サーカス団に入ることを夢見る少女マーシャと出会い、彼女を応援していく。
まず、27年ぶりに「チェブラーシカ」の映画を日本で製作することにGOサインを出した理由をウスペンスキーに聞いてみた。「日本から交渉に来られた人たちが善意に満ちていて、『チェブラーシカ』をよく理解してくれていることがわかったからです。映画化するにあたり、CGではなくパペットアニメで作ってくれたという点も嬉しかったです」。
中村監督がそうした理由を説明してくれた。「1969年から『チェブラーシカ』のシリーズが続いてきた中で、正統な続編を作るにはパペットでやるしかないと思っていました。そして新しく作るのであれば、チェブラーシカたち登場人物が、本当に生きているように見せたかった。そこで今まで1秒12コマだったものを24コマで撮ろうと決めたんです。その後、自分の首を絞めることになったのですが(苦笑)、それが一番のこだわりでした」。
脚本については中村監督ら4人のスタッフが手掛けたが、サーカス小屋が登場する物語は、チャップリンの『サーカス』(28)からインスパイアされたと言う。「ロシアのスタッフに会いに行った時、ふとチャップリンの『モダン・タイムズ』(36)のポスターが貼ってあるのを見て、オリジナル版のロマン・カチャーノフ監督は、もしかしてチャップリンを研究したのではないかと思ったんです。聞いてみたら、『きっとそうだ』というお話を聞いて、サーカスを登場させることにしました。サーカスとロシアは切っても切り離せないものですし」。ウスペンスキー氏はその脚本を読んだ時、「ロシアを研究し尽くした、とても良いできだと思いました」と笑顔で語った。
さらに彼は、完成した映画について、中村監督がこだわったというパペットの動きを絶賛する。「善良さ、温かさ、愛情が詰まった物語に注目してほしいのはもちろんだけど、何よりも素晴らしいのは動きです。まるで生きているようですから。少しテンポが付け加わった部分もあるけど、カチャーノフの動きをきちっと踏襲していました。今のロシアであんな仕事ができる人はいません」。
また、中村監督は原作の世界観をアピール。「チェブラーシカのかわいさ、ゲーナの優しさとか、ウスペンスキーさんのオリジナルの世界に満ちている善良さみたいなのを感じてほしいです」。
日本とロシア、両国のスタッフの相思相愛の関係があってこそ実現した本作。チェブラーシカたちが活き活きと動く姿を見れば、誰もが素朴なかわいさに魅了されること間違いなし。寒い冬だからこそ、ぜひ温もりのあるパペットアニメでほっこりとした気分になってほしい。【Movie Walker/山崎伸子】