『君を想って海をゆく』特別上映会で、クルド人難民の実情を知った学生たちの反応は?
クルド人難民とフランス人との触れ合いを描いた『君を想って海をゆく』(12月18日公開)の公開に先駆け、12月13日、明治学院大学白金キャンパスにて明治学院大学国際平和研究所主催によるトーク付き特別上映会が行われた。
フィリップ・リオレ監督が綿密なリサーチのもと、設定された社会背景と誰にでも通ずる心の心情をリアルに描いたドラマとして、ドキュメンタリーの体を取らずに難民の現状を浮き彫りにしている同作。人種や年齢を超えて芽生えた絆や登場人物それぞれが愛する者と真摯に対峙する姿に光を当てた作品となっている。
同イベントには、世界のクルド人写真を撮り続けている写真家の松浦範子氏が登壇、「クルドの人びと」と題した講演会が行われた。クルド民族について、松浦氏は「クルド民族は、トルコ、イラク、イラン、シリア、中東の中央区に住んでおり、クルド人としての国はなく、国境をはさんで暮らしている。クルディスタンと呼ばれる彼らは、約2500から3000人ぐらいといわれ、長い間その存在を否定されてきたので、正確な数字はわかっていない。主にイスラム教スンニ派を信仰し、各国の中で固有の言語、伝統行事、民族衣装、音楽を継承してきた」とわかりやすく説明。
また、「この作品にはイラクから来たクルド人の少年が登場します。イラクで実際に行われていた弾圧として、クルド人の村をぐるりと囲み、追い出す。南部の砂漠に連れて行かれ、強制労働や拷問にかけられて多くのクルド人が死に、周辺には現在も多くのクルド人の集団墓地があります。イラク政府軍とクルド人武装勢力は長い間紛争を繰り返し、イラン・イラク戦争時にはサダム・フセインによる核兵器を使った爆撃にあい、一度に5000人もの市民が犠牲になった」と悲痛な様を語った。そして最後に「今でも難民のクルド人がいることを覚えておいてほしい。常に個人レベルで多くの人が、身を守るため、より良い生活を求めてヨーロッパやアメリカ、日本に移住している(日本には、埼玉県蕨市にクルド人が多く住んでいると言われる)。合法的に行う者もいれば、密航という手段をとる者もいる」と強く呼びかけた。
学生を中心とした来場者は、松浦氏の講演を聞き、理解を深めた後、本作を鑑賞した。うなずきながら映画を見る姿や、感慨深げな表情で見る姿、上映後には目に涙を浮かべながら出てくる姿が多く見受けられた。【MovieWalker】