『名探偵コナン 紺青の拳』制作秘話に沸く!怪盗キッドの“笑い方”に表れた山口勝平のすごみ
東京・デジタルハリウッド大学で6月7日に「監督・プロデューサーが語る 映画『名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)』ができるまで」と題した公開講座が行われ、永岡智佳監督、プロデューサーの諏訪道彦、モデレーターの高橋光輝が出席。本作では、今回のメインキャラクターを担った怪盗キッドの素顔が多く出ていると明かした永岡監督が、「“ヒヒッ”というファニーな笑い方をするところがある。それはいつもの『コナン』ではやらない笑い方。(声優の)山口勝平さんに聞いたら『今回2か所でやっているよ』って言っていた」と告白。同じくメインキャラクターとなった京極真と園子のラブラブシーンは、原作者の青山剛昌が演出をつけたことなど、絵コンテや台本など貴重な資料を交えて制作秘話を明かした。
「名探偵コナン」の劇場版アニメシリーズ第23弾となる本作。“劇場版史上初”の海外となるシンガポールを舞台に、コナンと、その宿命のライバルである怪盗キッド、そして最強の空手家、京極真が、マリーナベイ・サンズ近郊で起きた殺人事件や巨大な陰謀に巻き込まれていく姿を描く。興行収入88億円を突破する大ヒットとなっている。
人気の高いキャラクターである怪盗キッドだが、その素顔は青山剛昌による漫画「まじっく快斗」の主人公・黒羽快斗でもある。永岡監督は「今回は『まじっく快斗』の要素、怪盗キッドの素の表情が多く出ている。『これは完全に快斗だな』と思ったのが、アフレコで山口勝平さんが“ヒヒッ”という笑い方をした時」とアフレコを述懐。「勝平さんは『NGって言われるかなと思ったんだけど、やっちゃった』って言ってました(笑)。『今回のキッドには快斗の要素を持ってきてもいいんだ』という、勝平さんなりの解釈で臨んでいたことが、その言葉にあらわれていた。さすがです。かっこいいキッドになった」と山口の芝居の深さに感嘆していた。
“傷だらけのキッド”のシーンも印象深いが、「これはヴァンパイヤのイメージ」とのこと。ヴァンパイヤというと太陽に弱いイメージがあるが、今回のキッドもミスをしてしまうシーンは昼間や夕方、傷を回復するシーンは夜など、細かく演出しているという。
また京極については、アクションシーンについての秘話が語られた。永岡監督が「京極さんがキッドに向かってパンチを浴びせるところがあるんですが、そこの京極さんのセリフは『うおおおお』しか思い浮かばなくて」と絵コンテを見せると、会場からも「おお!」とどよめきが。「セリフが思い浮かばなかったので、(声優の)檜山修之さんに任せてしまった。そうしたら『覚悟ー!』と入れていただいて。さすが!やっぱりキャラが入っているなと思った。すごくいい声が入った」とこちらでも、声優のキャラクターへの理解に驚かされたという。
“前髪のある園子”の絵コンテ披露にも、「かわいい!」と会場が沸いた。永岡監督も「コンテの時点でキュンとする。かわいい」と笑顔を見せ、「園子が、京極の額に“ちょん”とするシーンがあるんですけど、青山先生が『こうしてみて』と指示を入れてくださった。すごいキュンとする(シーンになった)。ちょっとした仕草を入れるだけで、キャラらしい動きになる。先生は乙女心を持っている」と絆創膏が鍵となる2人のラブラブなシーンをはじめ、青山の恋愛描写のうまさに舌を巻くひと幕も。
「怪盗キッドがすごく好き」という永岡監督だが、観客から「またコナン映画をやるとしたら、どのキャラクターを扱ってみたいか?」と聞かれると、「怪盗キッドはもう一回やってみたい。やれたらうれしいですね」とさらなる意欲をのぞかせていた。
取材・文/成田 おり枝