「夢のようです」妻夫木聡、“戦友”豊川悦司&半野監督と駆け抜けた3年半を振り返り、満面の笑み!
妻夫木聡と豊川悦司がダブル主演を務め、全編台湾ロケで撮影されたノワール・サスペンス『パラダイス・ネクスト』(公開中)の公開記念舞台挨拶が30日、新宿武蔵野館にて開催。妻夫木と豊川、そしてメガホンをとった半野喜弘監督が登壇し、作品が公開されたことの喜びと、ラストシーンの裏話について和気あいあいと語り合った。
本作は、台湾で自分の存在を消すように生きていたヤクザの島(豊川)と、彼が日本を離れるきっかけになった事件について知っているとほのめかすお調子者で馴れ馴れしい男、牧野(妻夫木)が出会うことから幕を開ける。牧野が何者かに命を狙われていることを知った島は、追っ手から逃れるために牧野を連れて台北から花蓮へと向かう。そこで2人は、シャオエン(ニッキー・シエ)という女性と出会うのだが…。
ホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャンクー監督など、アジアが世界に誇る名匠たちの作品で映画音楽を手掛け『雨にゆれる女』(16)で長編監督デビューをはたした半野監督は、構想から完成まで10年の歳月をかけた渾身の長編第2作について「完成することを目標にして、何度も『もう無理だ』となったのを経て、いまこの場に立てている。こうして皆さんに映画としてこの物語を観てもらえることを、幸せに感じています」と万感の想いを込めて語る。
また妻夫木も「初めて監督にお会いしてから3年半。何度、中目黒の飲み屋で話しましたかね」としみじみした表情を浮かべ「日本のスタッフや台湾のスタッフの方々の力もあって、なんとか公開することができました。夢のようです」とコメント。さらに豊川も「僕は、絶対無理だと思っていましたね」と率直に明かして笑いを誘うと「それから3年経ってこの映画をみなさんに観ていただけたことは本当に感慨深い。やればできるんだと、これからの自分のモチベーションになりました」とにこやかに語った。
先月行われた完成披露試写会の舞台挨拶では、撮影現場での妻夫木と豊川の仲良しエピソードや、妻夫木が命がけで臨んだ海のシーンでの撮影について語り合っていた3人。今回の舞台挨拶で話題にあがったのはクライマックスのシーン。「脚本はたぶんあったんですが、それだけじゃないなにかがあると監督と話していて、『1回しか撮らないので、牧野と島でいてくれれば』という言葉を受けて一回勝負でやりました」と、撮影前日に半野監督と相談して豊川の生の演技を引き出すためにアドリブを織り交ぜたことを明かした妻夫木。
それについて豊川は「前の晩に2人だけでこそこそしてるんですよ。でも部屋が並びなんですぐにわかって、なにか企んでるなと思っていたら案の定次の日一発勝負で。しかもブッキーは全部用意しているので、じゃあ僕は聞きましょうってなりました」と役者魂に火がついたことを告白。「既成の映画作りの中では、ああいうことはできない。テンションを最優先して撮影できたというのは楽しかったです」と、完成したシーンに確かな手応えを感じたようだ。
最後にマイクをとった半野監督は「2人のこれまでの役者としての経験や物の考え方、それをすべて使って役を作り、映画を作っていくことができました。まさしくこの3人で作った映画なんだという気持ちが僕にはあります」と、ともに駆け抜けてきた“戦友”2人に笑顔を向ける。すると豊川も「大切な一本です。すごく楽しかった」と振り返り、妻夫木も「半野さんとやり取りをして撮影ができたことが、なにより嬉しかった」と互いに笑顔を送り合っていた。
取材・文/久保田 和馬