アメコミ作品初の快挙!『ジョーカー』がヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を獲得
10月4日(金)に日米同時公開となる、孤独だが心優しい男が、悪のカリスマに変貌してく衝撃のドラマ『ジョーカー』。本作は第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、8月31日(現地時間)の世界初上映終了後には、ブラボーの嵐と共に8分間のスタンディング・オベーションが巻き起こった。そして7日(現地時間)に行われたコンペティション部門授賞式で、最高賞となる金獅子賞を受賞し、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭)で、アメコミ作品が最高賞を受賞するという初快挙を成し遂げた。
孤独だが心優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母からの「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を胸に、ピエロメイクの大道芸人をして暮らしていた。笑いのある人生はすばらしいと信じ、都会の片隅で必死に生きるアーサーだったが、やがて“心優しい男”だった彼は、“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌していく…。
受賞式で、トッド・フィリップス監督が「ホアキン・フェニックス抜きでこの映画はありえませんでした。ホアキンは、僕が知っている中で最も凶暴で、最も勇敢で、最も心の広いライオンです。そして、美しい心の持ち主です」と金獅子賞にちなんだユーモアを交えてホアキンへの敬意を表し、ホアキンが「Grazie. Grazie mille.(イタリア語で“ありがとう。本当にありがとう”)」と応じてみせると、会場からは盛大な拍手が巻き起こった。
ホアキンの演技を評価したのはフィリップス監督だけでなく、審査員の一人であるカナダの映画監督メアリー・ハロンは「フェニックスの素晴らしい演技に非常に感銘を受けました。映画祭のルールが無ければ彼は男優賞に輝いていたでしょう」と、本映画祭の“上位の賞はダブル受賞できない”という規則が無ければ、ホアキンは男優賞を受賞していたと惜しみない称賛を贈った。
さらにフィリップス監督は、「この映画で伝えたいことを観客は理解してくれるのかという不安もあった。映画祭のオーディエンスは私たちが表現したかったこと、伝えたかった事を理解してくれたと感じました」本映画祭のプレミア上映後の心情を述懐し、完成までに多くの反対に直面したことも明かしながら、本作への誇りと今回の受賞の喜びがいかに大きいものであるかを語った。
フィリップス監督はホアキンをイメージして本作の脚本を書き、撮影の6ヵ月前から2人で話し合いを重ね、撮影開始後も最終日まで日々ジョーカーに関する発見があったとも述べている。監督とホアキンが2人3脚で本作に挑んで信頼関係を築き、作品を作り上げたことを感じさせる授賞式だった。
本作の受賞は、フィリップス監督の手腕やホアキンの演技だけでなく、フィリップス監督が“いちばん信頼できるパートナー”と明かす「ハングオーバー!」シリーズや『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)などの撮影監督ローレンス・シャー、『アメイジング・スパイダーマン2』(14)など、卓越したキャリアを誇る美術デザイナーのマーク・フリードバーグ、『アーティスト』(11)、『ファントム・スレッド』(17)で衣装を担当しアカデミー賞を射止めたマーク・ブリッジスを始め、あらゆる技術が評価され実現した。もはやアメコミ映画としての枠、さらにはジャンルの限界を超えて、作品の質の高さを裏付けるものとなったと言えるだろう。
世界中から賛辞の声が続出している本作。金獅子賞受賞作品が例年、今後の賞レースで話題をさらっていることからも、本作がアカデミー賞をはじめとする賞レースを席巻することは間違いない!
文/編集部