あの巨匠の激レア作品も!アメリカの歴史を紐解くフィルムコレクションが一挙に上映
東京国際映画祭と国立映画アーカイブ、モーション・ピクチャー・アソシエーション(MPA)とアメリカ議会図書館が共同で主催する上映企画「アメリカ議会図書館 映画コレクション」が10月31日(木)から11月10日(日)まで東京・京橋にある国立映画アーカイブ「長瀬記念ホール OZU」にて開催される。
アメリカ議会図書館は、書籍から地図や版画、楽譜、写真、レコードなど様々な資料を所蔵する世界最大の図書館のひとつとして知られ、1989年には国家映画登録(NFR)制度を創設。世界の映画保存において先駆的かつ重要な試みに挑んでおり、現在では200万点以上の映画コレクションを有している。
今回の上映会では、大恐慌後の社会状況を色濃く反映した1930年代前半の作品から第二次世界大戦後の新たな潮流を象徴した映画まで、議会図書館に所蔵されているアメリカ映画の至宝といえる作品群を一挙に紹介。その目玉のひとつとなるのは、キング牧師の半生を再構成した日本未公開のドキュメンタリー映画『キング モンゴメリーからメンフィスまでの記録』(70)。
第43回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた同作は、1955年にアラバマ州モンゴメリーでバス・ボイコット運動に立ち上がり、1968年にテネシー州メンフィスで凶弾に倒れるまでの過程を、その時々のニュース映画のフッテージや音声テープのみを用いて再構成した作品。1999年にNFRに登録され、2012年に復元されたバージョンが日本で初めて上映される。
ほかにも、巨匠キング・ヴィダー監督の不朽の名作『街の風景』(31)と『摩天楼』(49)、『つばさ』(27)や『スタア誕生』(37)のウィリアム・A・ウェルマン監督の『飢ゆるアメリカ』(33)、のちに名作『カサブランカ』(42)を手掛けるマイケル・カーティス監督のスクリューボールコメディ『結婚スクラム』(38)や、犯罪映画の傑作『裸の町』(48)もラインナップ。
そしてジョン・フォード監督が戦時中の愛国心を風刺的に描いた『ウィリーが凱旋するとき』(50)に、人種差別と暴力や犯罪が横行するハーレムの風景をまざまざと映しだしたシャーリ・クラーク監督の『クール・ワールド』(63)と、日本では上映機会はおろかソフト化もされていない貴重な作品も上映。また、デザイナーとして活躍するチャールズ&レイ・イームズ夫妻の独創的な短編映画も6作品上映される。
なかなか観ることのできない作品に出会いたい映画ファンはもちろんのこと、現代のアメリカ社会に直接通じる歴史を学びたい人も必見の9プログラム14作品は、ほとんどが近年新たに作製された35ミリプリントで上映される。また各回先着20名まで、30歳以下の学生の方は学生証提示で入場料が無料になる「Student U30」も実施されるとのこと(当日券のみ)。第32回東京国際映画祭が開幕し、映画ファンが熱気に包まれるこの機会に足を運んでみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬