松本幸四郎、シネマ歌舞伎『女殺油地獄』は「実際の舞台よりもおもしろい」!?
歌舞伎の舞台を撮影し、映画館で上映するシネマ歌舞伎『女殺油地獄』(11月8日公開)が、第32回東京国際映画祭(TIFF)特別上映作品として11月2日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、主演の松本幸四郎が舞台挨拶に登壇した。松本は「去年7月に上演した、実際の舞台よりもおもしろい作品です」とおちゃめにアピールし、会場の笑いを取った。
歌舞伎「女殺油地獄」は、300年前に起きた実在の事件を基に、現代にも通じる若者の孤独と狂気を描いた近松門左衛門の名作だ。2018年7月に大阪松竹座で行われた十代目松本幸四郎の襲名披露公演としても話題になった作品で、松本、市川猿之助ほか豪華俳優陣が出演している。TIFFでシネマ歌舞伎が上映されたのは初となった。
松本は「今回の作品に関しては、お客様が入って実際に上演されたものも使用していますが、お客様がいない状態で上演して、シネマ歌舞伎用の撮影もしました」と解説。
さらにこだわったのが殺しのシーンだ。「舞台にカメラが3、4台上がっての撮影をしました。そこは上演している舞台を撮影するとなると、役者の声、音楽、お客様の反応すべてが同時録音されてしまうので、殺しのシーンだけは、与兵衛(松本幸四郎)とお吉(市川猿之助)の緊迫感あふれる息遣いや、着物がすれる音も撮りたいということで、義太夫がいない、無音のところで撮影をしました」。
また、シネマ歌舞伎について、松本は「歌舞伎の新たなジャンル」と捉えている。「過去に何本も作られていますが、(井上昌典)監督と『こういう可能性があるんじゃないか』と打ち合わせ、いまできる最大限のものを作りました。歴史の始まりを楽しんでいただきたい。伝統芸能ではなく、新たな歌舞伎というドラマ、映画を楽しんでいただきたい」と熱い想いを口にした。
取材・文/山崎 伸子