『漫才ギャング』の佐藤隆太「役者になって12年、新しい道に進んでいきたい!」
『ドロップ』に続く品川ヒロシの監督作第2弾『漫才ギャング』が3月19日から公開されている。売れない芸人と超不良がお笑いの頂点を目指す姿を描いた本作。主演を務めた佐藤隆太は、上地雄輔と劇中でコンビを組み、人生の再起をかけて戦う主人公を熱演している。今回、そんな佐藤隆太にインタビューを敢行。プレッシャーを感じていたと話す役作りでの苦労話や、作品との出会いで得た思いを語ってくれた。
結成10年目にもかかわらず、一向に売れないお笑いコンビ“ブラックストーン”。ある日、ボケ担当の飛夫(佐藤隆太)は、相方の保(綾部祐二)から解散を告げられる。ヤケになった末にトラブルに巻き込まれた飛夫は、留置場に送られてしまう。
「お笑い芸人を演じることに不安を抱いていた」と話す佐藤。演じるに当たって一番気を遣ったのは、意外にも観客を前にしたステージよりも、普段の会話のシーンだという。「僕はプライベートで芸人の方と仲良くさせてもらう機会も多いので、実際に近くで見ていて思うんですが、芸人さんって舞台を降りてカメラが回っていない時も、常にテンポが良くて漫才のような会話をしているんですよね。この映画を通して、漫才師の普段の光景を見られない一般のお客さんにも、芸人さんの素顔の部分や、普段も面白いっていうところを伝えたかった。そして、実はもがいていたり、明るく楽しいお笑いの世界とは真逆の影のような部分もちゃんと伝えたかったんですね」。
留置場で目覚めた飛夫は、上地雄輔扮する龍平と出会う。ケンカに明け暮れる日々を送っている龍平は、ドレッドヘアーにタトゥーだらけ。そんな龍平に初めはビビる飛夫。その心の声が、モノクロとカラーの切り替えで映し出され、佐藤の一人芝居が続く。その様子は、実力派の佐藤の腕の見せ所といった圧巻のシーンだ。「もともとは普通のナレーションでやる予定だったんですが、監督の提案で『実際に言ってみようぜ』ということになったんです。カメラが寄って、僕が1人で話す。あのシーンこそ品川さんならではの撮り方だと思う。完成した作品を見て、見ている人も、あそこから『漫才ギャング』っていう世界観に一気に入り込めるなと思いました」。
品川作品ならではの魅力と言えば、宮川大輔、ロバートの秋山や森三中の大森美幸、河本準一ら芸人仲間が多数出演し、物語を盛り上げている。彼らとの共演は「常に笑いの絶えない現場だった」と話す佐藤。そんな中で、お笑いに対する見方に変化はあったのだろうか? 「常に戦っている人たちだなって思いました。ここまで自分の身を削って、人に笑いを提供する。その生き様は大袈裟ではなく、本当に格好良いなって思いましたね。千鳥の大吾さんは、お芝居が完全に役者さんでしたね。見た瞬間、ヤバイと思いました。僕ら俳優としてやっている人間からしてみたら『これは負けてられないぞ』という良い刺激をもらいました」。
飛夫は、別れた元恋人の由美子(石原さとみ)の妊娠を機に、彼女と結婚。大切な家族のため、そして仲間との絆のために、それまで固持していたプライドを捨てて、人生の再起に奮闘する。演じた佐藤は、飛夫とは共通点も多く、今回の出演は「良いタイミングだった」と話す。「僕も役者になって12年目になりましたけど、飛夫も笑いを続けて10年。そして男が30歳になるということ。今まで自分がやってきたことを否定したくはないけど、もっと違うこともしたい、殻を破りたいというか。そういうモヤモヤした欲求がある中で、飛夫は一歩踏み出していく。僕も今までの自分の良いところは保ちつつ、また新しい道に進んでいきたい、そんなことを考えさせられました」。
最後に映画を見る人へのメッセージをくれた。「この映画には、夢はもちろん、友情や恋愛、笑いもアクションも本当にいろんなことが詰まっています。人によって楽しむポイントは違うかもしれませんが、絶対に楽しめるポイントがあると思います。お勧めです! 強く勧めます!」
佐藤隆太扮する飛夫をはじめ、『漫才ギャング』の登場人物たちは挫折を経験しながらも、人生を見つめ直し、それぞれの新たなに夢に立ち向かっていく。その清々しい姿は、誰もが新鮮な気持ちを抱く春の季節にふさわしい。彼らのエネルギーにあふれた熱演を、是非とも劇場で堪能してほしい。【取材・文/鈴木菜保美】