山田涼介、“キラキラ感”を消して挑んだ『記憶屋 あなたを忘れない』でのプロポーズシーンを語る
Hey! Say! JUMPの山田涼介が、アイドルのキラキラしたオーラを封印して挑んだ主演作『記憶屋 あなたを忘れない』(公開中)。端正なマスクで、ドラマ「金田一少年の事件簿N(neo)」などのミステリー作品から、映画「暗殺教室」シリーズや『鋼の錬金術師』(17)など、特異な役柄で強烈な個性を発揮してきた山田は、今回演じた“普通の大学生”という役柄について「逆に難しかったです」と感想を口にした。
原作は、累計50万部を売り上げた織守きょうやの人気小説。山田が演じたのは、恋人の澤田杏子(蓮佛美沙子)にプロポーズしたばかりの大学生、吉森遼一役だ。ところが、その後、杏子に会った時、彼女は遼一にまつわる記憶だけをすべて失っていた。遼一はショックを受けつつも、杏子がなぜそうなったのか原因を知りたいと思い、人の記憶を消せると噂される“記憶屋”を見つけだそうと奔走していく。
「こういうベタで素直なプロポーズもいいかな」
本作のメガホンをとったのは、『ツナグ』(12)やテレビドラマ「義母と娘のブルース」(18)の平川雄一朗監督だが、最初に会った時「すごくキラキラしてるね」と言われたそうだ。「その時の僕は普通に私服を着ていただけなので、『そんなことないですよ』と言いました。でも、僕は普段アイドルをやっているので、そういう“キラキラ感”はすごく邪魔になってしまうんだなと思い、そこを消さなきゃと思いました。だから普段は着ないチェックのシャツにニットを合わせたり、髪の色などについて自分で提案したりもしました」。
冬のイルミネーションが美しいシチュエーションで、杏子にドストレートなプロポーズをする遼一について「こういうベタで素直なプロポーズもいいなと思いました。僕はもっとロマンティックにやりたいですが」と笑う。
「実は、現場で平川監督が、指輪を映したカメラがそのまま僕のほうに移動していくカットを足しました。監督によると『山田ファンを悶絶させるため』だそうですが『ええ!そういうのはいらないですよ』と言ったんです(苦笑)。そしたら平川監督が『いやいや、これがいいんだよ』と」。
「だからこそ、自分の彼女が記憶を失った時、その記憶を取り戻したいと、すぐに動いたのだと思いました。もちろん壁が立ちはだかるけど、1つずつ丁寧に向き合っていく。そういう性格なので『僕が好きだから、結婚してほしい』と、杏子にプロポーズをしたのではないかと」。
「悲しみはつらくても、これから生きていくなかで必要なこと」
山田は遼一役を演じるうえで、杏子に対する思いが重すぎないように演じることを心掛けたそうだ。「捉え方によっては、すごく重くなってしまうので、そこは監督にさじ加減や言い回しについて毎回確認しながら演じました」。
遼一と共に、記憶屋を探していくのが、佐々木蔵之介演じる高原智秋だ。遼一の先輩で弁護士でもある高原と遼一のバディ感も楽しい。
「僕は、佐々木さんが出演した映画『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』が大好きで、以前から共演したいと思っていました。佐々木さんは、クールな役やダークな役の印象が強かったのですが、実際にお会いしたら、関西弁だし、すごくおもしろい方でした。大先輩なのに、僕たち若手に対して、そう感じさせないように接してくださったので、すごくありがたかったです。また、しゃべりだけではなく、アクション1つで場を和ませることができる方で、とても勉強になりました」。
そんな高原をはじめ、遼一を取り巻く人々の心の闇がいくつも明かされていく本作。劇中で、ある登場人物が「当事者じゃなければ、本当のつらさはわからない」と涙ながらに訴えるシーンが心に響くが、山田はこの台詞をどう受け止めたのか。
「僕も、人の痛みを100%理解することなんてできないと思っているので、すごく重みのある言葉だなと思いました。それは、もっといろんなことに目を向けたほうがいいよというメッセージでもあるのかなと。今年は台風の災害があちこちで起こったりしました。いまの日本に向けて、とても深い言葉だと思いました」。
ちなみに、山田自身は、“嫌な記憶を消したい”と思ったことはあるのだろうか?「消したい記憶ではないですが、苦しかった記憶ならあります。それは、僕がまだバックダンサーをやっていたころ、ライブのピンチヒッターをすることになり、2日間で24曲のダンスを覚えたことがありました。めちゃめちゃつらかったけど、やり遂げたという記憶です。でも、僕自身はそういうつらかった記憶も覚えていたいんです。悲しみやつらい経験も、生きていくうえで必要なことだと思うから」。
最後に山田はこう締めくくった。「普段なにげなく過ごしていくなかで、人生の記憶に触れる機会なんてそうないと思うので、人生について、そしていまの自分について、すごく考えさせられる映画になったと思います。ぜひ、映画を観たあと、周りの人とのつながり方に目を向けてほしいです」。
取材・文/山崎 伸子