芳根京子、山田涼介から号泣演技を絶賛されるも「嘘がつけない」

インタビュー

芳根京子、山田涼介から号泣演技を絶賛されるも「嘘がつけない」

『記憶屋 あなたを忘れない』でヒロインを務めた芳根京子
『記憶屋 あなたを忘れない』でヒロインを務めた芳根京子撮影/黒羽政士

Hey! Say! JUMPの山田涼介主演作『記憶屋 あなたを忘れない』(1月17日公開)で、ヒロインを務めた女優、芳根京子。2019年は映画、ドラマ、舞台で快進撃を見せつつ、アニメ映画『ぼくらの7日間戦争』(公開中)では、声優としても高い評価を受けた。持ち前のガッツとポテンシャルの高さはもちろん、常に自分自身の心に誠実に向き合う芳根の演技には嘘がなく、観る者の心を打つ。そんな芳根の役に対するアプローチ方法に迫った。

原作は、累計50万部を売り上げた織守きょうやの人気小説。吉森遼一(山田涼介)は、恋人の澤田杏子(蓮佛美沙子)が突然、自分にまつわる記憶だけをすべてを失ったことに衝撃を受ける。遼一は杏子の記憶を取り戻すために、人の記憶を消せると噂される“記憶屋”を探しだそうと奔走する。芳根は遼一の幼なじみ、河合真希役を演じた。

「山田さんはずっと“山田涼介”で、その姿勢が崩れる瞬間がなかったです」

【写真を見る】キラキラしたオーラを封印し、普通の大学生になりきった山田涼介
【写真を見る】キラキラしたオーラを封印し、普通の大学生になりきった山田涼介[C]2020「記憶屋」製作委員会

本作のメガホンをとったのは、『ツナグ』(12)やテレビドラマ「義母と娘のブルース」の平川雄一朗監督だが、底抜けに明るい真希役について、芳根が想定していたキャラクターよりも、更にハイテンションなものを求められたそうだ。

「脚本を読んで、うざい大袈裟な女の子にならないようにといろいろ考えた結果、自分のなかではもう少し大人で、落ち着いた女の子をイメージしていたんです。でも、現場で監督から『もっと明るく、もっとキャピキャピして』と言われ『どこまで行けばいいの?』と思うくらいテンションを上げていきましたが、なかなか思うようにいかなくて」。

最初は苦戦した芳根だが「ある日突然、監督が思う真希と自分のなかの真希が重なった瞬間があり、そこでようやく真希という役がつかめた感じです」と安堵の表情で語る。「それまでは何度やっても監督からOKが出なかったから、自分との戦いだと思っていましたが、山田さんは何度もお付き合いしてくださったので、本当に感謝しています」。

山田は今回、きらめくアイドルオーラを封印し、ごく普通の大学生、遼一役になりきった。遼一と真希は幼なじみの間柄だが、「最初は緊張していましたが、山田さんがナチュラルな気遣いをしてくれたのですごく救われました。山田さんは会話にしても、お芝居にしても、常に取りやすいボールを投げてくれので、すごくスムーズにコミュニケーションできました」と感謝しつつ、山田の姿勢や立ち居振る舞いについても「とにかく真摯」と感服したそうだ。

「朝から晩までずっと同じ現場で撮影をしていると、普通は素の顔が出てくるんです(笑)。でも、山田さんはずっと“山田涼介”で、その姿勢が崩れる瞬間がなかったです。私は撮影現場での山田さんしか見ていませんが、きっと本作以外のことでもすごく忙しいと思います。それでも周りに気を遣ってくれるし、こっちまで元気をもらえるので、そこは見習いたいと思いました」。

「そのシーンで涙が出るか出ないかは賭けのようなものです」

遼一の幼なじみである真希(芳根京子)
遼一の幼なじみである真希(芳根京子) [C]2020「記憶屋」製作委員会

山田は、別のインタビューで、芳根の演技力について「すごいです。芝居で言うといい意味でバケモノの類」と最大級の賛辞を述べ、劇中で真希が号泣するシーンについても「何回撮っても毎回同じところで泣くんです」と驚いたそうだ。そんな芳根に「“涙スイッチ”があるのですか?」と聞くと「ないです(笑)」と大きく首を振ったあと「なんでだろう?」と考える芳根。

「まず、私はすごく涙もろいです。でも、泣けないと思ったら本当に泣けないし、そういう意味では極端です。演じるシーンで涙が出るか出ないかは賭けのような感じで、自分が心を動かされたら、同じところで涙が出ます。だから『ここで泣けばいいんですね』という調整は全然できないです」。

自分の感情を正直に吐露するという芳根は「私はたぶん、嘘をつけないというか、嘘が下手なんです。『どうして女優なのに嘘がつけないの?』という考え方もあると思いますが、私は、台本にある自分の役は嘘じゃないと信じているので。例え小説や漫画の世界での役も、日本のどこかにいるんじゃないかと捉え、どこか人間味やリアリティみたいなものを出せたらいいなと思っているので、毎回監督に相談します」。

では、壮絶な体験をした役柄に挑む時は、どんなふうにアプローチをしていくのか。「自分が経験したことがないものを役として体現することはとても多いです。例えば、昨年のドラマ『TWO WEEKS』で検事の役を演じましたが、当然私は検事ではないし、国家資格も持っていません(笑)。なので、まずは台本に書かれている世界を信じることから始め、そこから自分はこうしたいと思うものを出していけたらと思って」。

真希役については平川監督のアドバイスが的確だったのか「自分の主観ではなく、客観的に見るとすごく違っていました」と仕上がった映画を観て痛感したそうだ。「そういう意味では、監督の意見を常に信じます。映画は人に観てもらうものだから、そういう客観的な意見はとても大事だと今回学びました」。

嘘をつくことが苦手だという芳根京子
嘘をつくことが苦手だという芳根京子撮影/黒羽政士

また、感情を沸点に持っていくための努力も惜しまない。「私は1回集中力が切れるとダメなタイプなんです。油断すると、監督に気づかれて『いまの演技は違ったね。もう1回やろうか』と止められたりもします。だから現場では、常に自分の気持ちを高めておこうと自分に圧をかけて、1本の線をピンと張っておくような感覚で演じています」。

さらに「現場で何テイク演じても、最終的に人に見られるのはその中の1つだけ。そう思うと、当たり前のことですが、どのテイクでも力は抜かずに、自分としてマックスなものを出したいと思っています」と、全力投球の姿勢で臨んでいると語った。

そんな芳根に2020年の目標について聞いた。「毎年思うことは、絶対に去年の自分を超えること。2019年は幅広く様々なことをやらせてもらいましたが、いまは好奇心の赴くままにいろいろなことに挑戦したい。そして、自分の可能性を見つけていき、そこから年齢が上がっていくにつれて、どんどん極めていけるようにしたい。だから、2020年もチャレンジの年にしたいと思います」。

取材・文/山崎 伸子

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