ついに『AKIRA』が4K UHDに!音響監督×メイン・キャストのスペシャル座談会(前編)
2019年、東京湾上に築かれた都市、ネオ東京。第三次世界大戦から復興を遂げ翌年にオリンピック開催を控えるこの街で、不良グループの金田らが、軍の最高機密“アキラ”を巡る戦いに巻き込まれていく――。独創的な世界観と緻密な映像表現が今なお色褪せない大友克洋による傑作SF『AKIRA』の究極のパッケージ、4Kリマスターセットが4月24日に発売される。その魅力に迫るスペシャル連載、第1回目は、実に30年ぶりの再会となった5人――明田川進(音響監督)、岩田光央(金田役)、佐々木望(鉄雄役)、小山茉美(ケイ役)、草尾毅(甲斐役)による激レア座談会の模様をお届けする!
「いつの間にか、皆さんいいおじさんになって(笑)」(小山)
――2019年(座談会の収録時)は、『AKIRA』劇中の舞台と同じ年です。そんな記念すべき時に、30年ぶりにこうしてお集まりになった感想をお聞かせください。
岩田「この5人で集まるのは、たぶん初めてだと思います」
佐々木「そうですね、当時スタジオに揃っていたことはあっても、それ以降集まる機会はなかったので、今回が本当に初めてです」
小山「いつの間にか、皆さんいいおじさんになってしまいましたね(笑)。今日はお会いできて本当にうれしいです」
草尾「やはり、30年分のそれぞれの思いがあると思いますが、当時のスタジオで、明田川さんがいらして、小山さん、岩田さん、佐々木さんたちと一緒にやっていた雰囲気というか空気感は変わっていないですね。僕からするとついこの間のことのような、もう30年も経ってしまったのかというような、そんな当時の雰囲気につながる、不思議な感覚でいます」
明田川「僕はこの30年の間に、全部で4回ほど『AKIRA』の音声をつくり直す現場に立ち会いまして。今回も、何十回となく音声を聞きながらダビング作業などをやらせてもらいました。そうした作業をする際に毎回思うのは、今日集まってくれた4人の声のバランスの良さですね。あの当時からこういうバランスができたというのは、すごく貴重な体験をさせてもらったという感じです。なおかつ、今回の4Kリマスター版のダビングも先日終わったんですが、やはり改めてすごい作品だと思いましたね」
「オーディションに行けば大友さんに会えるのでは!と」(岩田)
――皆さんは当時のオーディションの様子は覚えていらっしゃいますか?
岩田「当時、僕は劇団こまどりにいたんですが、劇団から『オーディションに行ってください』と連絡があって。それが、劇場版の『AKIRA』のアニメ化だと聞いた時は本当に驚いたし、うれしかったですね。僕は当時『ヤングマガジン』に連載されていた原作の『AKIRA』をずっと読んでいたものですから。それ以前の大友さんの作品である『気分はもう戦争』とか『童夢』なんかも大好きで。『AKIRA』って、あの大友さんの『AKIRA』なのか!?って」
――テンションが上がってしまったんですね。
岩田「大友さんに会えるんじゃないかと、非常にミーハーな理由ですが(笑)。オーディションに行って、少しずつ上がって行けば会えるかなと」
佐々木「私はある撮影所にいたんですが、待合室にあったピンク色の公衆電話越しに『「AKIRA」という作品のオーディションに行ってください。音響監督は明田川さんという方です』と言われて。記憶は断片的なんですが、電話を受けた時の撮影所のひんやりとした薄暗い廊下の雰囲気や、後日行ったオーディション現場ではたくさんの人が立ち会っておられて、そこで鉄雄のセリフを初めて演じてみた時の周りの空気感みたいなものは今もよく覚えています」
「すごく気合を入れて、脳ミソをフル回転させて挑んだ」(草尾)
草尾「『AKIRA』は公開は'88年ですが、声に関してはプレスコで先に収録をしていたので、実際には'86年の終わり頃からアフレコが始まったと記憶しています。当時はまだ養成所を出たばかりで、右も左もわからない状況でしたね。そのため、作品云々というよりも、とにかくオーディションにお声がけいただいたことだけでも光栄でしたし、それがましてや期待が大きい『AKIRA』という大作だったので、すごく気合いを入れて『よぉし!』と挑んだ感じですね。何をどうやったかは覚えていないんですが、勢いだけはすごくあったことを覚えています。役が決まった当時、多分最初に顔合わせが一度だけあって、そこで錚々たるキャストの皆さんにお会いして、意気込んでいって。台詞の収録の時は、プレスコなので絵がないのと、台本にもあまり状況を説明する指示はなかったこともあって、『これが一体どういうシーンで、どんなことがあるのか?』と悩む部分も多くて、脳ミソをフル回転させて挑んだという記憶があります。そういう意味では、オーディションよりも実際に収録が始まったスタジオの空気感や雰囲気のほうをすごく覚えていますね」
――小山さんはオーディションだったのでしょうか?
明田川「彼女はオーディションをやっていないと思うんで」
小山「覚えてないんです。ごめんなさい」
明田川「彼女は、決め打ちでいった感じがありますね」
小山「『AKIRA』の前に、大友さんがキャラクターデザインをされた『幻魔大戦』('83)でルナ役を演じていたので、たぶんそれで大友さんは私のことをご存知で声をかけていただけたのだと思います」
――明田川さんが中心となってオーディションの声がけなどをされたと思いますが、人選については大友さんからどのようなイメージを聞いていたのでしょうか?
明田川「大友さんからキャラクターの性格設定をお聞きして、それに対して『こういう人たちはどうでしょうか?』と。茉美さんは別として、メインのキャラクターはアニメで主役をやっているような人じゃないのがいいと言われていましたから。そこで、当時はみんなが知らない、ここから出てくれる人がいいなという思いはありましたね。岩田君も草尾君も最初はアニメの声優をやろうとしていたわけではないんですよね。佐々木さんは少し登ってきていた頃だったかな」
佐々木「デビューしてほぼ1年くらいでした、たしか」
明田川「佐々木さんもここから出たということですね。いつも聞き直して不思議に思うのは、佐々木さんは性格設定などの話をしなくても、脚本を自分なりに読み込んできているんじゃないかというくらい、芝居づくりが異常なほどすごいんですよね」
小山「やりたいようにやってたでしょ?」
佐々木「はい」
草尾「天才的ですよね」
佐々木「そ、そうですか?(笑)」
小山「それがすごいなと思って」
明田川「まあ、“やりたいことをやっている”という意味では、岩田君もそうだったけどね」
小山「そうそう、そうなんですよ(笑)」
明田川「本当に台本にないことをアドリブで色々と入れてくるから。それがまた良かったんですよ。そして、草尾君は真面目で。この3人のバランスが本当に最高ですよね」
(後編へ続く)
取材・文/石井誠【DVD&動画配信でーた編集部】