ついに『AKIRA』が4K UHDに!音響監督×メイン・キャストのスペシャル座談会(後編)
『AKIRA』4Kリマスターセットが4月24日に発売を前に、明田川進(音響監督)、岩田光央(金田役)、佐々木望(鉄雄役)、小山茉美(ケイ役)、草尾毅(甲斐役)による激レア座談会が実現した!
「大友さんの横で、明田川さんがニコニコしながら見守っていてくださった」(岩田)
――『AKIRA』はプレスコで収録されたことも当時話題になりました。音響監督としては、アフレコとは演出の仕方が違うかと思いますが、そのあたりの感覚はいかがでしたか?
明田川「“口が合っていない”とかそういう神経を使わなくていいというのはありますね。あと、『AKIRA』では大友さんがべったり張り付いて、自分できちんとやりたいと希望されていたので、その意向に沿うように進めました。だから、あまり僕のほうから言わずに、なるべく大友さんが説明できるところは説明してほしいなと。それを基に、皆さんに任せて、自分のやりたい芝居をきちんとやってくれるところを生かしたいという思いもありましたね」
――アフレコは絵に合わせて芝居のコントロールをしなければいけないと思いますが、プレスコは役者のやりたい形、やれる方向性みたいなものをどんどん引き出せるということでしょうか?
明田川「そうですね。普段のアフレコなら、『この人を呼んだことによって、普通はこのくらい演じてくれる』と考えるわけですが、むしろ役者さんにお任せできる。『こういう役なら、あなたはどう演じてくれますか?』となるわけですからね。これはとても贅沢なことです」
小山「役者側にとってはちょっと怖いですけどね」
岩田「当時のことでよく覚えているのは、明田川さんがおっしゃった通り、スタジオに大友さんが入られて、全部ご自身で説明してくれたことですね。その横で、明田川さんがニコニコしながら見守っていてくださった。ただ、大友さんは漫画家であって音響のプロではないので、伝えるのに困ることがあって、それを明田川さんが『こういうことなんじゃないかな』とフォローして僕らに伝えてくれる。スタジオの中の全体を見て、うまくバランスをとっていただいていたのかなと感じました。明田川さんがいてくださったので円滑に進められるような、潤滑剤というと失礼ですが、そういう形でうまく場を仕切ってくださった記憶がありますね」
佐々木「大友先生のスタジオでの存在感も大きかったし、明田川さんが一緒にいらっしゃる安心感もすごく大きかったです。全て委ねてくれて『自由におやりなさい』という感じで、プレスコの様子を見ていただいたという」
岩田「本当に明田川さんが横でニコニコしながら助け船も出してくれるので安心してできたという感じですよね」
佐々木「だから我々若手は、『こういう言い方をしてみよう』『こういう“間”をとってみよう』と自由に、思い切り挑戦できましたね」
小山「特に金田は野放し状態でした(笑)」
岩田「ちょっと待ってください。そうでしたっけ?(笑)」
小山「すごく生き生きとやってましたよ」
――アドリブがあふれている感じですよね。
明田川「感じるでしょう? あふれてるんです(笑)」
小山「次のシーンになってるのにしゃべり続ける」
明田川「それがまた味になっている」
岩田「よくやっていましたね。本当に若気の至りです。いや~、恐ろしい(笑)」
「これからも日本を代表する作品であり続けると思う」(佐々木)
――4Kリマスターによって映像も音楽も生まれ変わった『AKIRA』を手に取ったファンに、メッセージをお願いします。
草尾「『AKIRA』は、本当に語り始めたら何日かかっても足りないくらい、僕らの中にも皆さんの中にも言いたいことが山ほどあるような作品だと思います。その『AKIRA』がさらに素晴らしく生まれ変わったわけですから、初めて観る方にはすごい衝撃を感じていただきたいですし、昔から何度も観ている方ならば、別の作品のような勢いで楽しめるものになっていると思います」
小山「とにかく、30年という時間の流れを感じさせない、素晴らしい作品です。アニメがデジタル化される直前の作品。作画をはじめとするつくり手側の熱い想いが結集したらこんなものが出来上がるんだという驚きがあります。4Kになってそれをさらにクリアに感じていただけると思います」
佐々木「『AKIRA』を公開当時に初めて拝見した時、『これはアニメじゃないよな』と思ったんです。こんな作品がつくれてしまうんだと。それは今も変わっていなくて、その後、何度『AKIRA』を観ても他のアニメと比べることができない、アニメのカテゴリーを超えている、特殊な、言葉に尽くせないくらいすごい映画です。そして30年後に本当に東京オリンピックが開催されることを先取りしてしまった作品でもありますよね。今、まさに時代が『AKIRA』に追いついたとも言えるし、時代が永遠に追いつかないような気もします。4Kリマスターを拝見しましたが、『AKIRA』はずっと時代のいちばん前を走っていて、これからも日本を代表する作品であり続けると思います」
岩田「先ほど茉美さんがおっしゃってくださったんですが、4Kになって当時のつくり手の皆さんの情熱がよーく伝わるようになりました。以前、スタッフの方のお話を聞いたことがあるんですが、『AKIRA』の制作当時、全国のアニメーターが会社の垣根を越えて手伝った、後にも先にもあんなことはなかったとおっしゃっていました。それだけの熱量を持って、『大友が何か面白いことをやっているぞ』『俺も参加したい!』と。そんな時代だったことと、そして情熱をもっていたことが、4Kの映像のおかげで観えてきた。映像を止めると1枚の絵画のように見えるクオリティの映像になっているので、僕も早く4K対応のテレビやレコーダーを買って、ゆっくりと止めながら観たいと思っています」
取材・文/石井誠【DVD&動画配信でーた編集部】