“コロナショック”で新作映画のオンデマンド配信が続出!映画興行の新たな可能性を切り拓くか?
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、アメリカ国内ではほぼすべての映画館が一時休業しており、多くの大作映画が公開延期を余儀なくされている。そうしたなか、大手映画スタジオであるユニバーサルは『トロールズ ミュージック★パワー』のオンデマンド配信を、劇場公開が予定されていた4月10日からスタート。コロナショックが始まって以後、メジャースタジオでは初となるこの試みは、映画興行の新しい可能性を切り拓くのではないかとVarietyは指摘している。
ユニバーサルではすでに、『透明人間』や『Emma(原題)』など3月中旬の閉鎖前に劇場公開していた作品のオンデマンド配信を始めているが、劇場公開予定日と同時に配信を始めるのはこれが初めて(なお、全米でも閉鎖されていないドライブインシアターでは上映されるとのこと)。
この異例の決断をユニバーサルが発表して以降、パラマウントは『ビッグ・シック ぼくたちの大いなるめざめ』(17)の監督・主演コンビの最新作『The Lovebirds』をNetflixに売却。ディズニーは『アルテミスと妖精の身代金』を劇場公開予定日だった5月29日(金)よりDisney+で配信することを発表するなど、他のメジャースタジオも追随。
近年アメリカではアニメーション作品の続編の多くが前作を上回る収益をあげることができず苦戦を強いられている。そのため『トロールズ ミュージック★パワー』は、劇場が再開されてから再び宣伝を行なうのではコストがかかりすぎてしまうことから、デマンド配信に踏み切ったという見方も。しかし興行分析の専門家からは「ストリーミングだけで収益をあげることは難しいだろう」という意見が出ている。
自宅待機を余儀なくされている人々に新作映画を提供する機会となる今回の試みが成功すれば、“新作映画は90日間劇場で上映する”という長年守られつづけてきたルールにも変化が生まれることになるだろう。新たな可能性を見出すと期待する声があがる一方で、コロナショックによる一時的なものに過ぎないという声も。どんな結果が待っているのか、注目が集まるところだ。
2016年に公開され全世界興行収入3億5000万ドル以上を記録し、第89回アカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた『トロールズ』の続編となる『トロールズ ミュージック★パワー』。日本ではいまのところ10月の劇場公開が予定されている。劇場で安心して観られることを願いながら、いまのうちに前作をおさらいしてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬