【特別寄稿】清水崇監督が語る“映画館愛”「映画館での鑑賞は体験なのです」
緊急事態宣言を受け、休業要請施設の対象となった映画館。外出自粛要請もあり、外に出られないいま、映画人たちはどのように過ごして、どのような気持ちで映画と、映画館と向き合っているのだろうか。『呪怨』シリーズや『9次元からきた男』『犬鳴村』など、映画館で大きな驚き・楽しみを与え続けてくれる清水崇監督が、映画館への切望コメントをMovie Walker編集部に寄稿してくれた。
映画館での鑑賞は体験なのです
映画なんて配信でいいじゃないか?DVDで見れるじゃないか?
本当にそうですか?
今…自宅軟禁状態の僕らにとって、確かに自宅で手頃に楽しめる配信やDVDは便利です。しかし、気軽に“見れる”のと“観る”のは違います。
大きなスクリーン、高音質、大音量のスピーカーと配置でこそ、僕ら作り手が届けたかった繊細な画質や色合い、緻密に拘り尽くした音で映画の体験は完成します。そして、それはお客様に足を運んでいただいた映画館でしか再現されません。正直、ご家庭での視聴“見る”は劇場での鑑賞“観る”とは似て非なる人生経験です。
暗闇で集中力を研ぎ澄ませ、多くの見知らぬ人たちと同じ時を過ごす…そう、映画館での鑑賞は体験なのです。
同じ映画でも、人によって、またその時の年齢や心境、観た仲間によってまで違った印象になります。
前述した作り手側のエゴはさておき、何よりも異なるのは“いつ?”“どこのどんな映画館で?”“誰と?”“どんな心境で?”“どう思い、何を感じたか?”
映画は、映画館でお客様の感性に届いた時…その内容や質、完成度を超えて、皆さん個人のものになります。
各位の中で、その時、その瞬間、その年齢、個性に応じた人生の1ページになり得てしまうものだと思っています。
僕は10歳の時に観た『E.T.』という映画で、監督という職業に憧れを抱きました。
しかし、僕らが作っただけではどうにもなりません。どんな名作だろうと誰の心にも届きません。
僕ら作り手が精魂込めた映画をスクリーンにかけ、宣伝し、お客様を誘導してくださる劇場関係者の皆さん、そして誰よりも映画館まで足を運んで観に来てくださるお客様がいてくれてこそです。いつもありがとうございます!
社会的には「映画どころではない」時勢に陥り、呼びかけひとつ出来ない状況下ですが、映画体験の灯が消されぬよう、踏ん張りましょう!!
表現の自由が奪われ、映画産業が崩壊したスーダンでも映画館は復興されました。(近日公開予定『ようこそ、革命シネマへ』より)僕らが新型コロナウィルスの猛攻をくぐり抜け、この沈黙を破った時、改めて多くの方々と喜怒哀楽に浸るゆとりを持てるよう…皆さん、今こそ思いやりの気持ちで乗り越えましょう!!
清水崇:映画監督
文/編集部