【特別寄稿】上田慎一郎監督が語る“映画館愛”「映画館は生きているんだと思います」
緊急事態宣言を受け、休業要請施設の対象となった映画館。そんななか、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が、映画館への愛をMovie Walker編集部に寄稿してくれた。ぜひ、現在YouTubeで公開中の短編映画『カメラを止めるな!リモート大作戦!』もあわせて観てみてほしい。
映画館は生きているんだと思います
映画ファンとして。「映画館で映画を観る」ことは僕にとって、食事をとる事、睡眠をとる事と等しく大事なことでした。時に食事や睡眠より優先してしまう時すらありました。心の栄養補給とでもいいましょうか。映画館で映画を観ない時期が続くと栄養失調をきたし、心身が不調をきたしはじめます。ワクワクしながら映画館へ向かう道中の時間。上映開始を待ちわびながら映画泥棒を、予告編を見る時間。そして暗闇に身を埋めて映画を楽しむ時間。帰りの電車の中で映画を反芻する時間…。すべての時間をひっくるめて映画。どれもが自分にとって愛おしい時間です。それらの時間を届けてくれていたのは全国の映画館です。映画館の一刻も早い復帰を、いち映画ファンとして心待ちにしています。
映画監督として。『カメラを止めるな!』をはじめ、多くの監督作を全国様々な映画館で上映頂いてきました。舞台挨拶は200回以上やったんじゃないでしょうか。特にカメ止め公開時の初期、新宿K's cinemaと池袋シネマ・ロサには毎日通いました。毎日が部活。控え室がまるで部室のようでした。全国津々浦々、沢山の映画館をまわりました。映画館にはそれぞれ顔があります。建物やロビーの雰囲気。スクリーンの大きさや色。座席の感触。そこで働く人々の個性。一度訪れたことがある映画館を、久しぶりに訪れる時は、まるで友人に再会したような気持ちになります。映画館は生きているんだと思います。全国にいる沢山の友人と再び笑顔で再会できる日を。その日を心待ちにしています。
また笑顔で。また映画館で。
上田慎一郎(映画監督)
文/編集部