絵画の中に入ってみる? 名画の謎を解き明かす体感型のアートムービーが登場
16世紀のフランドル絵画を代表する画家ピーテル・ブリューゲル。その名前を耳にしたことがない方でも、代表作「バベルの塔」や「雪の中の狩人」を見れば、「ああ、あの画家か」と納得いただけることだろう。そんなブリューゲル自身に導かれて、彼の名画の作品世界に入りこむことができる異色のアートムービー『ブリューゲルの動く絵』が12月17日(土)より公開されている。
ブリューゲルは、あのミケランジェロなどと同じく、16世紀に活躍した画家だが、その作品は同時代の画家たちと比べても独特なものばかりだ。農民の生活をモチーフとすることが多かったため“農民画家”と呼ばれることもあるが、彼自身は知識人サークルに属した教養人だったという。彼の作品は少し高い位置から俯瞰した地面の上に、雑然と人物たちを配置するといったものが多く、本作に登場する「十字架を担うキリスト」もその一例だ。
劇中では、その「十字架を担うキリスト」に描かれた人物たちにスポットが当てられ、この名画に隠された秘密をルトガー・ハウアー演じるブリューゲル自身が解き明かしていくのだが、最新のCG技術を駆使したビジュアルエフェクトによって、まるで本当に絵画の中に入り込んでブリューゲルの話を聞いているかのような体験をすることができる。静止画と動画を巧みに合成させた映像は、一種の知的なアトラクションと言って良いほどだ。
監督を務めたのはポーランドの鬼才レフ・マイエフスキ。ビデオアートを専門とする監督で、ニューヨーク近代美術館やヴェネツィア・ビエンナーレへの出品経験もある映像アーティストだ。今作はアート界の先人ブリューゲルに対して最大限のオマージュを捧げつつも、独特のセンスで自らのアート作品として仕上げてみせた。
ブリューゲル作品を読み解く教育映画的な側面もありながら、同時に摩訶不思議な映像アトラクションとしても高いクオリティを実現している本作。フランドル絵画に興味のある方はもちろん、小さな子供から大人まで楽しんでもらいたい作品だ。【トライワークス】