あっぱれ103歳の大往生!伝説のウクレレ奏者ビル・タピアの演奏を見よ

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あっぱれ103歳の大往生!伝説のウクレレ奏者ビル・タピアの演奏を見よ

アーティストとして103歳で天寿を全う。素晴らしい最後だ。世界最高齢のプロ演奏家とされていたウクレレ奏者ビル・タピアが、老衰のためカリフォルニア州ウェストミンスターの自宅で12月2日に死去。ルイ・アームストロングやエルビス・プレスリーらとも共演してきた巨星が散った。そんなビル・タピアの生前のライブ映像が拝めるドキュメンタリー映画『マイティ・ウクレレ』が12月10日(土)より公開される。

タピアは1908年1月1日、ハワイ・ホノルル生まれ。7歳でウクレレ創始者の一人、マニュエル・ヌメスから75セントで最初のマイウクレレを手に入れる。その後、10歳でプロミュージシャンとしてデビューし、美しい音色と独自のパフォーマンスで、ハワイをはじめ、世界中のミュージシャンに多大な影響を与えてきた。“伝説”“殿堂”といったどんな言葉を並べても、彼の100年近いキャリアを物語るには足りない気がする。

後の世にも語り継がれるであろう偉大な演奏家タピアは、一時期、最愛の家族に先立たれた時、悲しみのあまり、全ての楽器を手放したことがある。そういう人間愛に満ちた人柄も含め、人々から敬愛されている。その後、50年以上離れていたウクレレを再び手に取ってからの彼は、精力的に活動を続けてきた。劇中では演奏シーンの他、ファンたちと交流する姿も収録されている。人生の年輪を刻んだ穏やかな微笑みに、心が洗われるようだ。

『マイティ・ウクレレ』では、タピアの他、いろんなウクレレ奏者をフィーチャーしつつ、ウクレレ誕生の歴史も語っていく。まずは冒頭、『フラガール』(06)の音楽でも知られるジェイク・シマブクロの天才的な演奏テクで度肝を抜き、つかみはOK。その後も、ジェームズ・ヒル、タイマネ・ガートナーなど、名プレイヤーの華麗な演奏シーンを散りばめつつも、ウクレレのビギナーである子供たちの合奏シーンでは、誰もが楽しめる楽器ウクレレの敷居の低さも紹介されている。

見終わってから、ウクレレ奏者の共通言語は、音色と笑顔なんだと実感。ウクレレの世界は緩いというよりも懐が深い。だからこそ、奏者のみんなが至福の表情を浮かべている。世界平和について小難しいご託を並べるより、まずはこの映画を見てほしい、というと大袈裟だろうか。【文/山崎伸子】

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