役所広司と初共演の小栗旬、“キツツキの飴”でじゃれ合う?
映画『キツツキと雨』が2月11日に公開初日を迎え、役所広司、小栗旬が沖田修一監督と共に舞台挨拶を行った。小栗はもはや恒例となった着物姿で登場。バレンタイン間近ということもあり、スタッフから映画にちなんだ“キツツキの飴”をプレゼントされ、飴で役所を突くなど仲の良さそうな姿を見せた。
昨年10月に行われた第24回東京国際映画祭コンペティション部門で上映されてから4ヶ月が経ち、公開初日を迎えた劇場には、既に試写会なども含めて4、5回鑑賞しているという観客もいるほど。何度見ても味わい深いストーリーが展開する本作で、木こり克彦を演じた役所広司は、もともとチェーンソーが使えるという特技が役立った。役所は「木こり役は初めてでしたが、台本でチェーンソーの文字を見た時は、得意なものがあるなと思いました」と話した。そんな役所は、小栗旬演じる新人映画監督・幸一と出会い、彼のゾンビ映画にゾンビとして出演することになる。役所は「あれだけメイクすると何も怖いものはない。撮影を楽しみにしていました」とコメントし、そのゾンビを目の当たりにしたばかりの観客から温かい拍手が起こった。また、高良健吾演じる息子・浩一と繰り広げた親子の物語については、「高良くんも良い青年で、浩一みたいにダラダラした子ではない。小栗くん演じる幸一と、本当の息子の浩一の存在がだぶるあたりは、さすが沖田さんの脚本は素晴らしいなと思いました」と監督自ら手がけた脚本を絶賛した。
一方、映画のエンディングで次回作が『サメ』という映画を撮ることが明らかになった幸一について、演じた小栗旬は「監督と『たぶん、もう幸一はホラー映画を撮りたくないのに、ゾンビ映画がうまいこといっちゃったから、またホラー映画を撮らなきゃいけなくなった。可哀想だね』って話してたんです」と語り、すかさず沖田監督から「二組の男女が海に行って、抜け駆けしたカップルがサメに襲われるという映画です」と幸一の次回作の設定を語り、観客を楽しませた。
撮影で最も印象的だったシーンについては、「お風呂のシーン」と話す小栗。「すごく寒かった。氷点下の中で役所さんとガタガタ震えながら撮影しました」と話し、役所も「役者魂で撮影した、男らしい撮影でしたね」と当時を振り返った。また「ラストのゾンビと村人の戦いのシーンでは、雨が降ったりと色々ありましたが、沖田監督からカットの声がかかった時は、いろんな思いを感じました」と感慨深げ。すると「撮影の時から思っていたんですけど、あのシーン、幸一はよくワンカットでいこうと思ったな」と小栗。『シュアリー・サムデイ』(10)で監督経験のある小栗は、演じた幸一の監督としてのこだわりを感じたようだ。
メガホンを取った沖田修一監督は『南極料理人』(09)をはじめ、登場人物たちの絶妙なやりとりで微笑ましい世界観を作り出す名手。「監督をしていると、『映画の神様っているんじゃないか』って思う瞬間が何度もある。今回も不思議な体験をすることがたくさんありました。そんな中で、作り話を一生懸命作ってることが愛らしいことだなと思っています」と監督業についての思いを語った。
舞台挨拶後半には、バレインタインのプレゼントとして、スタッフから飴を受け取った3人。飴は映画のタイトルにちなみ、キツツキの形をしたもの。「良いにおいするね」などと飴を興味深く見つめる彼らに、「バレンタインに感謝の気持ちを伝えたい人はいますか?」と司会者が質問すると、役所は「今日こうして映画を見てくれた皆さん」と答えた。すると「僕もそうです」と小栗。続く監督も「僕もそうです」と、息の合ったところを見せた。
第24回東京国際映画祭では審査員特別賞、第8回ドバイ国際映画祭では最優秀男優賞をはじめ、数々の賞に輝いた本作。役所は「国境を越えていろんなお客さんが楽しんでくれたのは嬉しい。日本人のお客さんにはもっと伝わるものがあると思います。トロフィーはみんなでいただいたものですから、お祝いをしたいですね」と話し、「今日は『キツツキ』とか『はやぶさ』とかありますが、『キツツキ』は小振りな作品ではありますが、記事は大きくしてください」と映画をアピールした。そんな中、独特の魅力を放つ沖田監督は「キツツキの足がもげっちゃった」と足の取れてしまったキツツキの飴を観客に見せ、「不吉だな」とぽつり。最後まで観客から笑顔の絶えない舞台挨拶となった。【取材・文/鈴木菜保美】