『ももへの手紙』の美山加恋「スランプもあったけど、今は現場にいることが幸せ!」
『人狼 JIN-ROH』(00)の沖浦啓之監督が、7年の歳月をかけた意欲作『ももへの手紙』(4月21日公開)で、ヒロイン・もも役の声優を務めた美山加恋にインタビュー。草なぎ剛主演のドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」(04)で、名子役として注目された美山も今や15歳。親子特有の心のわだかまりや愛情に揺れるももを、伸び伸びと自然体で好演した。
舞台は、陽光がまぶしい夏の瀬戸内海の汐島。亡くした父への思いを胸に、母と島に引っ越してきたももは、そこで“見守り組”と名乗る奇妙な妖怪トリオと出会う。ももは妖怪たちとの出会いを通して、父や母との絆をかみしめる。『劇場版 NARUTO ナルト 大活劇!雪姫忍法帖だってばよ!!』(04)など、声優の仕事は何度が体験してきた美山。「アフレコのお仕事では、テンションを高めるため、始まる前にジャンプしたりして、気分を上げてからやっていました」。
アフレコは、母親・いく子役の優香と一緒に行った。「最初は緊張しましたが、優香さんがたくさん話しかけてくださって、どんどんリラックスしていきました」。とはいえ、初日はももが母の大切な鏡を割ってしまうという大事なシーンの撮影日だった。「いきなり泣くシーンだったのです。泣きながら熱が入っていったので、全力を出せました」。泣くシーンについては、常にその場で実際に泣くという美山。「泣いてないのに泣く声を出すのは難しいので、いつも泣きます。ドラマではもっとやりやすいんですが、アニメだと全然違いますね。画に合わせながら、ちょっとしゃくり上げるような感じで泣くんですが、タイミングを合わせるために何度も泣きました」。
一番苦労したシーンは、つばをゴクリと飲むシーンだ。「天井裏に何か(妖怪たち)がいるってことに気づき、ゴックンってやるシーンです。実際、つばを飲んでも音は出ないから、飲んでるような音を出すんですが、休憩時間中もずっと練習したのに全然できなくて。何十回も撮り直しをして、『できないのかな?』って感じの雰囲気になったんです。その時、『絶対に私がやります!』って断言したら、ようやくできました」。どうやら、彼女は粘り強いタイプらしい。「何十回もやったのに、それができないなんてことは嫌なんです。せっかく多くの皆さんが関わってくださっているので、自分も最後まで頑張りたいし、粘りたいです」。
子役から順風満帆にキャリアを積んできた美山は、15歳の今、女優業についてどんな思いを抱いているのか。「今までは、ただ現場に行けば楽しくて、すごく幸せでしたが、中学生になった頃、私は『なぜこの世界にいるんだろう?』って、ふと考えるようになって。スランプというか、本番中になぜか首が震えるようなことがありました。その時、ここまで来られたのは偶然だし、自分の力もあるのかもしれないけど、皆さんに支えてもらったんだなっていろんなことを思い返してみたんです。それで、自分が何をしている時が一番幸せか?って思った時、現場にいる時だと気づきました」。
そう語る彼女の笑顔には一点の曇もない。「スタッフさん、監督さん、共演者の皆さんがいる空間にいられることがすごく幸せなんです。それからは自分に自信を持って、やっていこうと思うようになりました。だから最近はすごく楽しくなってきたんです」。
最後に美山は、映画のテーマをしっかりと訴えかける。「家族ってどういう存在なんだろうって、特に私たちの世代では考えないと思うんですが、ほっとできる居場所が家族なんだって、映画を見て思いました。また、お母さんでも子供でも伝えないとわからないことってあるし、ちゃんと伝えようって。そういう大切さに気づかせてくれる映画です」。まさに美山は、ヒロインとして、そのメッセージをきちんと体現し、多くの世代にエールを送ってくれているのだ。【取材・文/山崎伸子】