濱田岳、『ポテチ』で「一番おっかない監督」中村義洋と役者初共演!

インタビュー

濱田岳、『ポテチ』で「一番おっかない監督」中村義洋と役者初共演!

『ロボジー』(12)、『宇宙兄弟』(公開中)と話題作を連打する濱田岳の最新主演作は、伊坂幸太郎原作×中村義洋監督という黄金コンビの最新作『ポテチ』(5月12日公開、仙台先行上映中)。これまでに『アヒルと鴨のコインロッカー』(07)、『フィッシュストーリー』(09)、『ゴールデンスランバー』(10)でも組んできた、勝手知ったるチームゆえに、彼はオファーをもらった直後、二つ返事で快諾した。そこで濱田にインタビューし、中村監督へのあふれる思いや撮影裏話を聞いた。

実は、『ゴールデンスランバー』で彼が演じた連続殺人犯のキルオは、伊坂幸太郎が濱田を当て書きしたキャラクターだ。濱田は「役者冥利に尽きます」と笑顔を見せた。「もともと、キルオは小太りでアキバ系のイメージだったそうですが、『アヒルと鴨のコインロッカー』以降、僕みたいに小っちゃくて、おでこが広い人に変更してくださったみたいです。伊坂さんに当て書いてほしい人なんて、世の中にたくさんいますから、それは僕の唯一の自慢です。今回も伊坂さんと中村監督の映画だったから、『どんな役だろうとやります』と言いました」。

『ポテチ』で濱田が扮するのは、空き巣を生業とする今村忠司役。彼がプロ野球選手・尾崎の自宅に空き巣に入ったことで、ふたりの出生を巡る物語が交錯していく。中村監督は、純粋な人柄の今村と、素顔の濱田が似ていると言っていたが、濱田は「今村はド純粋でバカ真っ直ぐで、だからこそ事件を巻き起こしちゃう。でも、僕は彼ほど真っ直ぐではないです」と分析する。「ただ、僕は原作を読み込んだり、資料を集めたりといった役作りの仕方が未だによくわからなくて。だから、いつも役と自分の共通項を見つけようとするんです」。

濱田流のアプローチの仕方はこうだ。「たとえば、無邪気に人を殺してしまうキルオ役の時も、自分と共通する部分を探りました。極端な話、人を殺す要素が僕の中にあるか?っていえば、きっとあるんです。それが大きいか、小さいかの違いだけで。本当に人を殺しちゃうキルオが100持っていれば、僕にあるのは1とか0.1かもしれないけど、それを100まで引き伸ばしていく作業です。今村の場合も、僕は彼ほど純粋じゃないけど、自分の中の純粋な部分を見つけ、今村の値まで伸ばしました。だから、僕が演じるどの役柄も僕と似ているし、僕っちゃ僕なんですよ」。

本作では、今村の親分役を務めた中村監督と初めて役者としての“共演”を果たしている。現場で13回もNGを出したという中村監督について、「緊張してるなって感じでした(笑)」と語る。「相当やりづらかったと思います。気心の知れた少数精鋭の仲間たちで撮っているから、みんなおかしくて仕方がなくて。スタッフたちは笑っちゃいけないから、台本で顔を隠しながら僕らのことを見ていました。僕は普段通りに楽しくやっていましたが。でも、監督が13回もNGを出したのは、自分の演技を客観視できなかったんだろうなと。13回やっても、結局使ったのは前半のカットですから」。

ふたりは劇中で、まさにあうんの呼吸を見せている。「毎回、細かい演出を受けるわけではないんですが、どんどん仲良くはなっていきます。監督とはとにかく気が合うんですよ。気が合う人って、くくりの中で頂点にいるのは、笑いのツボが合う人だと僕は思いますが、中村監督はその頂点にいる一人です。笑いのツボ=感性も近いだろうし、だからいろんなことが通じ合えるのかもしれないです。でもその分、僕の中で一番おっかない監督でもあります。毎回成長していかないと、次でまた呼んでもらえるかどうかってわからないし、絶対に妥協しない監督だから、ごまかしがきかない。だから、ものすごく仲が良いけど、ものすごく怖いし、ものすごく厳しい人でもあります」。

これまでの作品同様、オフビートなテンポで始まりながら、物語は意外な方に展開していき、ラストでは心をがっちりと鷲づかみにされる『ポテチ』。これぞ伊坂マジックの真骨頂だが、濱田岳と俳優も務めた中村監督の熱い絆があったからこそ出来上がった珠玉の一作だ。【取材・文/山崎伸子】

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