『ネイビーシールズ』に出演した米海軍特殊部隊の現役隊員を直撃「なぜ命を懸けて戦えるのか?」

インタビュー

『ネイビーシールズ』に出演した米海軍特殊部隊の現役隊員を直撃「なぜ命を懸けて戦えるのか?」

ウサマ・ビン・ラディンを暗殺したことでも注目されたアメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ。彼らを主人公にした『ネイビーシールズ』(6月22日公開)は、何と現役のSEAL隊員をキャスティングし、銃、ハイテク兵器、戦闘機から潜水艦まで、全て本物を使用したリアルな戦争映画だ。フランス映画祭で上映される本作のキャンペーンで、主演を務めた現役隊員ローク・デンバー少佐が来日。映画の撮影秘話や、命懸けのミッションを遂行する心意気について話を聞いた。

本作を監督したのは、米海軍の短編ドキュメンタリー『Navy SWCC』を手掛けたスコット・ウォー&マイク・マッコイ監督。当初、隊員役には俳優をキャスティングする予定だったが、過酷な内容から、現役の隊員たちに出演してもらうことになった。ローク少佐は「でも、僕らにはそれぞれ任務があるので、映画のプレミアなどには参加できなかったよ」と苦笑い。

実際、本作は無名の俳優陣の映画であるにも関わらず、全米No.1ヒットの興行成績を記録した。今や彼はハリウッドスターだが、その感想を聞くと「全然実感が湧かないよ。今までと暮らしは変わっていないし。ただ、自分のやりたいことの希望リストに『クリント・イーストウッドの映画に出演したい』という項目が追加されたくらいだ」と、ウィットに富んだ受け答えをしてくれた。

とても柔和な印象を受けるローク少佐。でも、いざ戦地へ行けば、荒々しいバトルを繰り広げる本物の軍人なのだ。恐れや不安などを、彼はどのように克服しているのか?「それは日々の訓練の賜物かな。劇中でも実弾を使っているけど、僕たちはこれまでに1000回以上、実弾での訓練をやっている。だから、いろんなところから弾が飛んでくる状況は日常だよ。本当は怖いはずだけど、どのような状況になっても慌てない、パニックにならないことを想定したトレーニングを積み上げている。だから、恐怖感を感じないんだ」。

では、なぜそこまでして、人のために命を懸けて戦えるのか?「僕ら隊員たちは、近しい兄弟愛でつながれているから。戦闘中の小隊は言わば、一つの生命体で、そこには自分のことだけを考える人なんていないよ。たとえば、仲間を助けるために、自分自身が目の前の手榴弾に覆い被さって死ぬ、という行為が劇中に出てくる。でも、きっとあの人は、とっさに自分のことは考えていないんだ。条件反射的に飛びかかれる。それが本当の自己犠牲なんだと思う」。

自己犠牲という言葉も、現役隊員の口から出ると、言葉の重みが全く違う。続けて、もしも同じような状況になったら、本当に身を投げ出せるのか?と食いついてみた。「それはその場になってみないと誰もわからない」と、静かに答えた大佐。「今、それを自分自身がやれる、と答えることもできるけど、それはあえて言わないでおきたい。ただ、きっとその場にいたら、自分の同志にケガをさせたくないという思いが先に出るとは思う」。この真摯な答えから、大佐の誠実さと、仲間を思う絆の強さがひしひしと伝わってきた。

最後にローク少佐は『ネイビーシールズ』について、こう語った。「隊員たちはごく少数の人間だけど、多くの方の平和や安全な暮らしを自分の肩で支えているという誇りを常に感じている。それを皆さんにわかっていただきたい」。本作には、オスカー俳優でも到底表現できないであろう真のドラマが映し出されている。本物が見せる勇気と気高さを、しかと目に焼き付けてもらいたい。【取材・文/山崎伸子】

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