山寺宏一、『放課後ミッドナイターズ』海外公開で「日本のヤマデラをアピールしたい」

インタビュー

山寺宏一、『放課後ミッドナイターズ』海外公開で「日本のヤマデラをアピールしたい」

8月25日(土)に公開される『放課後ミッドナイターズ』は、都市伝説に満ちた真夜中の小学校を舞台に起こる、一夜の大騒動を描いたアトラクションムービー。主人公は、夜中だけ自由に動き回れる人体模型のキュンストレーキだ。負けず嫌いで子供嫌い、天才科学者のくせに子供じみて、ちょっと間抜けな愛すべきキャラクターを、ベテラン声優の山寺宏一がこれまで以上の躍動感とリズム感で演じて魅せている。

「一見、グロテスクなキャラですが、映像を見たら、面白い、面白い。『頼むからやらせてくれ、絶対他の奴に渡すな!』って思いました。声優が見る映像はもちろんセリフがない状態なんですけど、表情が瞬き一つから細かくて、生き生きとしているし、画がよく動いていて、声優としては『こういうのほしい!』っていう感じ。どんな声を出すか、見た瞬間に閃きましたね。キャラクターの動きに乗せられるんですよ。たとえば、僕が大好きな場面は、相棒で骨格標本のゴスと一緒に旧校舎に行く場面。実はビビっているキュンが、ゴスに『お前、行ってこい』って言う時の表情が、映像なのに、よっぽどうまい俳優じゃないとできないっていう芝居なんですよ。思うに、良い作品って『こういう声を出しなさい』っていうのは全部決められているんですよね。声優はそれを理解して、声を当てはめているだけ」。

作品の映像を初めて見た時、「これまでの日本の感性とは違う!」と感じたという山寺。全体のタッチ、映像のテンポ、キャラクターデザイン、名画のエッセンスをパロったディテールなどなど、はっきりとは言えないが、最も違うと感じたのは前半で差し挟まれるユニークなミュージカルのような場面だったという。

「あそこまで長く歌って踊る場面は、日本のアニメでは見たことがないですね。僕自身、歌うのが好きなので楽しかったし、他のアニメとは違う!ってことを見せる最初の場面なんで、あそこで観客のハートをがっちりつかみたい。不気味に思っている人を、笑って良いんだ?って思わせるところですから。ミュージカル映画『ロッキー・ホラー・ショー』(75)みたいな。あれもホラーコメディですよね。日本だとあまり作られていないですけど、ティム・バートンなんかも人気だし。監督もああいう世界が大好きだと聞いたので『どおりで!』と思いましたね」。

物語は3人の女の子がひょんなことから真夜中の小学校を訪れたことから始まる。天然、セレブ、オタクの無敵の3人組は、キュンストレーキの理科室存亡を賭けた波乱万丈の冒険に巻き込まれていく。次々と現れる学校の亡霊たちを無邪気パワーで撃破していく様子が、可愛く、面白く、そして痛快だ。

「小学生の時の僕はものすごい怖がりでしたから、たとえ学校に忘れ物をしたとしても、夜に取りに行くなんて絶対しなかったですけど、あの3人は最強ですから。画だけ見てるとすごく可愛くて面白くて、キュンと同じ作品のキャラクターじゃないみたいですが、キュンがどんなに頑張っても敵いませんね。でもラストには、爽やかに感動させられちゃうんですよ。3人の屈託のなさ、人体模型と骨格標本を相手に無邪気に楽しめる純粋さに。キュンストレーキ、キュンと来ました(笑)」

映像の高い独創性と完成度から、完成前から海外での公開が決定した本作。海外での公開は吹替が通常なので、山寺は「もろ手を上げて喜びきれなかった」と語る。だが、この作品で嬉しかったのは、現地で吹替を行わず、山寺の声のまま字幕での公開が決まったことだった。

「この間、アジアのアニメファンと話す機会があったんですが、好きな声優を聞いたら若手の名前ばっかり出てきて、『僕は?』って聞いたら、嫌いじゃないです、みたいな感じで(笑)。悔しい思いをしたんですよ。この作品で山寺宏一をアピールしたいですね。もちろん、アニメファンじゃなくても楽しんでもらえる作品だと思いますよ。字幕での公開なら、声の表情から汲み取れるニュアンスなんかも楽しんでもらえるし、『日本のヤマデラの表現はすごい!』なんて話が聞こえてきたら嬉しいです。吹替で公開にするにしても、すごいエンターテイナーが出てくる、たとえばエディ・マーフィとジム・キャリーの戦いに!なんて妄想したりしてね(笑)」

現在、日本を含むアジア5ヶ国に加え、先日パリで開催されたジャパンエキスポでヨーロッパ各国の映画関係者の目に止まり、エトランジェ映画祭(パリ)、レインダンス映画祭(イギリス)、シッチェス国際ファンタスティック映画祭(スペイン)へも招待作品として出品が決まっている本作。キュン、そして相棒ゴス(声:田口浩正)、ふたりの掛け合いを劇場で思い切り楽しんでほしい!【Movie Walker】

作品情報へ