文化系女子のカリスマ・菊池亜希子が映画『よだかのほし』のヒロインに

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文化系女子のカリスマ・菊池亜希子が映画『よだかのほし』のヒロインに

宮沢賢治の短編小説「よだかの星」、そして「ふるさと」や「まつり」をモチーフに、20代後半に差し掛かったOLの心の再生を描き出すファンタジー映画『よだかのほし』が、9月22日(土)より新宿武蔵野館ほかで公開される。

ヒロインは、東京で暮らす28歳のOL・本郷トワ。父と死別し、再婚を許せなかった母とは故郷を出て以来、音信不通。会社では周囲になじめず、父がよく読んでくれた「よだかの星」に出てくる、嫌われ者で醜いよだかに自分を重ね、空しさを感じながら生きている。そんなトワが、あるきっかけから10年ぶりに故郷の岩手・花巻に帰ることになり、故郷の町を巡る中で、次第に生きる輝きを取り戻していく。

監督は『アニムスアニマ』(05)で劇場用映画デビューを果たした斉藤玲子。本作の企画・脚本も務め、花巻を舞台に選び、大人のファンタジーロマンを紡ぎ出した。斉藤監督は「普通の生活の中で人間は必ず再生できるということを、賢治の愛した花巻祭りなどを題材に描き、被災地にエールを送りたかった」と語っている。震災後、宮沢賢治のメッセージが再評価される中、賢治の故郷で自身のルーツをたどる女性の旅は、見る者に“忘れている何か”を思い起こさせるきっかけを与えることだろう。

主演は『森崎書店の日々』(10)、『わが母の記』(12)などに出演した菊池亜希子。最近ではイラストと文章全てを本人が手掛ける「みちくさ」シリーズや、責任編集本の出版で文化系女子のカリスマ的存在となり、今後の活躍が期待される注目女優だ。本作では、ヒロイン・本郷トワの普通の生活の中に眠る感情の起伏を細やかに表現している。その菊池亜希子のインタビューを紹介する。

菊池本人が「出会うべき時に、出会うべくして出会った作品」と口にする『よだかのほし』。作品をどうとらえているのか?「宮沢賢治の描いた『よだかの星』という物語を、一人の女性の成長物語として新たに描き出した現代の大人のための童話ではないかなと思います。賢治の物語は、とてもシンプルな言葉で綴られている分、受け取る側によって解釈が異なるのが一つの魅力だと思います。トワの目を通して、どんな人の中にも必ずいるであろう『よだか』の部分に、何か訴えることができたら、そして最後に明るい光を感じてもらえたら、とても嬉しいです」。

「出会えて良かった」というトワ役。その出会いは菊池にいろんな思いを抱かせた。「演じた当時、同じ年齢だったということもあり、限りなく自分と重なる存在でした。トワの考えていることは、なぜか手に取るようにわかったんです。だから、役と向き合うという作業は、私と向き合うことでもありました。だから、役作りや演技プランを綿密に考えるということは、あまりしませんでした。トワとしてその場に存在すること、その場所の空気、人の声、自分の心の動きに素直に反応することだけを心がけていました。トワと一緒に、一歩立ち止まって自分と向き合うことができた。そしてその作品が、こうして旅立っていくことで、ようやく私も次の一歩を踏み出せるような、そんな気がしています」。

菊池をトワとして存在させた斉藤監督への思いは?「監督は、とても穏やかで女性らしい繊細な感覚を持った方だなあと感じました。演技に関しては、細かく話し合うという作業はあまりしませんでしたが、私の中にいるトワを自然に引き出してもらえたような気がしています。たまに、監督自身が動いて演じて見せてくださるのですが、その仕草がとても可愛くて、ときめいてしまいました(笑)」。

撮影で訪れた花巻は、「私の故郷(岐阜県揖斐郡)にとても似た空気を持っている街」と感じたそう。「景色が広くて大きくて、川の流れがゆったりしていて、流れている空気がどこまでも穏やか。初めて花巻の街を訪れた時の、街の中心部まで向かう際の車窓から見た風景がとても優しくて、思わず『ただいま』と言ってしまいそうでした」。

そんな土地での撮影で再認識したこともあった。「何か問題にぶつかったり、不安で押しつぶされそうになった時に、答えを示してくれるわけではないけれど、絶対にそっぽを向かず、見守ってくれる存在。それが、私にとっての故郷、そして家族です。ただそこにいてくれるだけで自分は支えられていて、だから立っていられる、そんなことを改めて感じました」。

今作の出演に当たって、ここまでの道のりを振り返って思うことを問うと、「まだまだ始まったばかり。振り返るほどのことを、私はしていないです」と答えてくれた。「でも、もしかしたらトワと同じで、過去を振り返るのが怖いのかもしれません。演じるという仕事は、本当に難しい。答えもないし、ゴールもない。でも、だからやめられない面白さがあるのかもしれないです」と続けた。

女優の他、絵を描き、文章を書き、雑誌を作るなど多方面で活動する自身を、「一つに決められないのは欲張りなのかもしれません」という。「だけど、全部好きなことなので、どれか一つに決めたくないんです。一見バラバラ、今はそれぞれが点かもしれないけれど、それが波紋のように広がって重なったりしていったら、それはとても面白そうだなと、思ったりします」。

『よだかのほし』で、女優・菊池亜希子が生み出す新たな波紋に触れてみてはいかがだろうか。【Movie Walker】

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