『罪とか罰とか』成海璃子インタビュー 2/2
■成海璃子激白「ハッピーよりも不条理が好き」
成海璃子は、KERAワールドを初めて経験して、どんな印象を持ったのだろう?
「最後までつかめなかったですね。技術を身につけたくないし、自己満(足)になるのが怖いから、自分ではあまりやりきったなって感じもないし、よく分からないけど、台詞で『あっ、噛んじゃった』って言ったり、普通の映画じゃやらないことをやっているのは面白かったですね。あと、舞台をやられている役者さんがすごく多かったから、見ていてスゴいと思うことの連続でした。映画だとカメラのアングルとかに守られている気がするんですよ。でも、舞台だとそこに立たされて、芝居だけ(で勝負する)しかないから、それってスゴいんだろうなって思いましたね」
その一方で、「監督も言ってたんですけど、KERAさんと私は“笑い”のツボが似ていて……」と思わず顔がほころぶ。
「私もハッピーな感じは好きじゃないんですよ。不条理なものの方が好きだから、今回はドンピシャでした(笑)。でも、撮影中に笑いが止まらなくなったシーンがあって。高校時代のモモ(安藤サクラ) とアヤメがカフェでスカウトマンに声をかけられるシーンで、あそこは実はいろんなバージョンを撮ったんですけど、(笑いがこらえられなくて)本当にヤバかったんです。申し訳なくて、家に帰りたいって思いました(笑)」
それにしても、ここ数年の成海璃子の活躍は目覚しい。それこそ全速力で駆け抜けた印象すらあるが、彼女自身の中には何か変化はあるのだろうか?
「以前は、その作品が終わった次の日が別の作品のクランクインでも全然大丈夫だったし、むしろ嬉しかったんですけど、これをクランクアップした次の日から戦争モノ(「千の風になってドラマスペシャル なでしこ隊〜秘密基地・知覧 少女だけが見た‘特攻’…封印された23日間〜」)に入ったときはすごくキツくて。なんとかやれたけど、準備期間はやっぱり必要だと思ったし、1本の作品に自分の気持ちを注ぐ時間が大きくなったような気がします。そもそも、今の16歳という年齢で別に働く必要もないわけだし、好きだからやっていることなので、好きじゃなくなったらやっている意味がない。いつまでも好きでいたいと思ってるんですよね」
そこには思春期特有の、複雑に揺れ動く感情も見え隠れする。
「私は芝居も日々の生活もこれまでずっと感覚だけでやってきたなって思うんだけど、だんだん大人になっていくうちに、中学生のときと比べてやっぱり考えるようになっちゃって。今でも、考えずに動くのがいいと思っているので、中学のときの自分は理想でもあるし、羨ましいですね。それこそ中学のときは、周りは全員敵だし、誰にも負ける気がしないって思っていた(笑)。今は “私は私”って開き直るのも言い訳みたいな感じがしてイヤだから、そうは思ってないけど、やるからにはやっぱり勝ちたいですね」
なんとも頼もしい彼女に、最後に2009年の抱負を聞いてみた。
「今まで自分で決断したことがあまりなかったから、ちょっとしたことでも、自分でひとつずつ選んでやっていこうと思っていて。まだ16歳なので、もちろん親に相談しなきゃいけないことも多いけど、自分の人生だから、自分で決めなきゃなと思っているんです」
女優としての未来が大きく開かれた成海璃子が、今後自分の意志で何をチョイスし、どんな新しい一面を見せてくれるのか楽しみだ。その成長と進化をこれからもずっと見つめていきたい。【イソガイマサト】