『アイアン・スカイ』ウド・キア「続編は総統がロボットになってよみがえると面白いね」
9月28日に公開されるや、その奇抜な設定と、B級作品とは思えないほどのクオリティや政治風刺に絶賛の声が多く聞かれる『アイアン・スカイ』。2週間経った現在もその人気は衰えず、快進撃を見せている。既に続編とその前日譚の製作も決まっており、まだまだ『アイアン・スカイ』ブームは続きそうだ。今回は、ユリア・ディーツェに続き、月面ナチスのウォルフガング・コーツフライシュ総統を演じたウド・キアのインタビューをお届けする。
――本作への出演を決めた一番の理由はどこでしょうか?また、どのような形でオファーがあったのでしょう?
「とにかく脚本が面白く、おかしかった。これまでいろんなナチスの映画を見てきたが、月へ行ったナチスなんて初めてで、しかもその総統の役だなんてやるしかなかったよ。オファーはティモ・ヴオレンソラ監督から直接だった。自分を思って描いたキャラクターとのことで、4年間も私のことを思っていてくれたことが嬉しいね」
――いかにSF作品とはいえ、ドイツ人のあなたにとって、ナチスを題材にした作品は何かと気を遣うと思いますが、その辺での苦労はありませんでしたか?結構、政治的な風刺もありますよね
「コメディだから全く気にしなかったよ。過去にもイギリス映画やドイツ映画、ショートフィルムでもナチスを扱ったことがあるし、ヒトラーを演じたこともある。ロブ・ゾンビの映画でも二度ナチスを演じているが、全てコメディで、シリアスな作品ではナチスを演じたりはしない。とにかく脚本を読んで面白かったから仕事を受けた。ただ、1944年生まれだから、ちょうど辛い時代。制服を着るととてもインパクトがあり、違和感を覚えた。特に黒の制服はパワーがある」
――演じるうえで最もこだわった点や配慮した点はどこでしょうか?また様々な国籍を持ったキャスト、スタッフたちの集まりでしたが、他の共演者や監督とのコミュニケーションや面白いエピソードがあれば教えてください
「とても良い雰囲気の現場だったよ。通常、ハリウッドでの映画にいろんな国の関係者が関わると、お互いの権利の主張が多くて、うまくいかないことが多いけど、ドイツやオーストラリアの出資者たちが、ティモ監督やスタッフに裁量を多く与えていて、良い作品を作れる環境があった。ドイツ人役者がみんな英語で演じるのに、アメリカ映画に多く出ている僕だけがドイツ語で話すというのは違和感があったね。その日の撮影が終わると、みんなで食事に行くっていう現場も珍しくて良い経験だったよ」
――あなたが演じたウォルフガング総統はああいう形で、途中で残念ながら姿を消してしまいますが、これについてはいかがですか?
「友達も皆、自分が早々に死んだことを残念がっていたよ。当然、役者としても死にたくないし、できるだけ長く映っていたいからね」
――本作の続編・前日譚の製作も決定しましたが、それには出演されるのでしょうか?また今後の出演作なども聞かせてください
「この続編は屋根の上で口から血を流して死んだ総統が、ロボットになってよみがえるところから始まると面白いかもね。その前にもう一本、タイムマシーンをモチーフにした映画で博士役として主演を予定しているよ。僕はティモ監督が好きになったから、彼の映画には全部出続けたいよ。前日譚については君たちの方が私より知っていそうだね。(このインタビュー時)映画はまだアメリカでも公開されていないんだ。でも面白いから絶対ヒットするよ。翻訳に問題がなければ、日本の人にもきっと気に入ってもらえるはずだ」
本作の製作国フィンランドでは9月に第25回ヘルシンキ国際映画祭が開催され、プロデューサーであるテロ・カウコマーが年間最優秀プロデューサーに選出された。その場で、テロ・カウコマーの口から現在上映中の本編に約25分の未収録シーンを追加したロング版を制作していることが発表され、ファンを大いに喜ばせた。音楽担当のライバッハの音源も新たに追加されるということで、どんな映像が追加されるのか非常に気になるところだ。【Movie Walker】