キアヌ・リーブス製作のドキュメンタリー公開!黒沢清が「映画監督は必要ない?」と嘆く
キアヌ・リーブス製作のドキュメンタリー『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』(12月22日公開)が、第25回東京国際映画祭で上映され、それに関連したトークショーが10月26日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催。黒沢清監督とシネマトグラファーの栗田豊通が登壇し、映画製作における“フィルムからデジタルへの変遷”について、独自の視点で語った。
本作は、キアヌ・リーブスが企画製作し、ナビゲーターを務めた、シネマの現在と未来を探るドキュメンタリー。マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デヴィッド・フィンチャー、デヴィッド・リンチ、クリストファー・ノーラン、スティーブン・ソダーバーグ、ダニー・ボイルら、名だたる大物映画監督たちが出演し、「フィルムとデジタルのメリット、デメリットは?」「今後の映画はどうなる?」といったキアヌの質問に答えていく内容だ。
トークショーに登場した黒沢清監督は、第54回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した『回路』(00)をはじめ、『CURE』(97)、『アカルイミライ』(03)などを製作。シネマトグラファーの栗田豊通は、三池崇史監督、ロバート・アルトマン監督作品の撮影などで国際的に活躍し、現在はアカデミーの新規会員候補として選出されるなど、両人とも映画のプロフェッショナルとして活動中だ。
しかし、同ドキュメンタリーを見たふたりは、何やら辛そうな面持ちに。「(海外では)カラーリスト(映像の色彩を操る専門家)が、監督や撮影監督なんかより権限があるというのをこの作品で見て、そんなのあり?って驚きました。監督は出る幕がないなあと途方に暮れてしまった」と、黒沢監督は苦笑。すると栗田も「僕もそこを心配している。そのうち、監督というものが要らなくなってくるでしょうね。デジタルというテクノロジーで、そういう段階にきているんですよ」と、不安げな顔を見せた。
とはいえ、「今は興味があるのでフィルムより、デジタルで撮りたいと思っています」と黒沢監督。「ただ、フィルムも残して、フィルムもやれるというチャンスを残してほしい。映画は、ラッシュ(撮影済みフィルム)を見るまで、何が映っているかわからないところが楽しいと思うから。ラッシュを見て、びっくりしたり、がっくりしたりしたいんですよね」と、フィルム、デジタル両方の存続を熱望した。これには、栗田も賛成のようで、「デジタルは表現の幅を広げてくれるし、フィルムは“撮影後にみんなでワインでも飲みながらラッシュを見る”という行動自体が楽しかったりする。つまり、映画作りの面白さってどこにあるの?ということ。フィルムとデジタルの転換期だからこそ、考えたい問題。デジタルとどう関わっていくか、デジタルになったことで、現場とどう関わっていくか、これらを考えることも僕たちの課題ですね」と、まとめた。
『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』は12月22日(土)より全国で順次公開。黒沢監督は「映画業界の人しか盛り上がれない内容かもしれないけど(笑)。ハリウッドの監督がいっぱい出ていて興奮しました。監督たちは感情的にフィルムが好きか、デジタルが好きかと語っていましたが、観客がどう感じるかも気になります」と語り、同作をアピールした。【MovieWalker】