東京国際映画祭グランプリは『もうひとりの息子』!『最強のふたり』に続き、仏映画が2年連続受賞
記念すべき第25回東京国際映画祭が10月28日に閉幕。クロージングセレモニーでは各賞の受賞式が行われた。東京サクラグランプリに輝いたのは、フランス映画『もうひとりの息子』で、ロレーヌ・レヴィ監督は監督賞と合わせて2冠を手にした。現在大ヒット中の昨年の受賞作『最強のふたり』に続いて、フランス映画がサクラグランプリを連続受賞した。
『もうひとりの息子』は、フランス映画でありながら、イスラエルとパレスチナ問題に斬り込んだ野心作だ。兵役用健康検査で、自分の両親の実子でないことを知ったイスラエル人の青年。その後、彼が出生時に手違いがあったことを知り、イスラエルとパレスチナというふたつの家庭が、彼のアイデンティティを揺さぶるという感動作だ。ロレーヌ・レヴィ監督は「これは本当でしょうか?」と舞い上がりながら、「今日は最高です」と語り、関係者に感謝を述べた後、「この賞をイスラエルとパレスチナの子供たちに捧げたい」と語った。
また、審査委員特別賞を受賞したのは、韓国映画『未熟な犯罪者』だ。本作では、ソ・ヨンジュが主演男優賞も受賞し、同じく2冠に輝いた。カン・イグァン監督は、ソ・ヨンジュと、共に参加していた主演女優イ・ジョンヒョンと3人で喜びを分かち合った。日本からは、松江哲明監督のドキュメンタリー『フラッシュバックメモリーズ 3D』(2013年3月公開)が、観客賞に輝いた。松江監督は「お客さんがすごく温かいリアクションを伝えてくださった」と喜びを口にした。
ロジャー・コーマン審査委員長は、晴れやかな表情で総評を述べた。「本当の意味で、映画の力を私たちは体験しました。文化や環境が違っても、1本ずつの映画から学び取ることが非常に大きかったです。どこの映画であろうと、真髄には人間性という共通のテーマがあります。人間性を考えた時、私はみんなが素晴らしい人間性を持っていると思うし、希望を持ちました」。
大盛況で最終日を迎えた第25回東京国際映画祭。最後は、依田巽チェアマンの「今こそ、映画の力を」という掛け声で、授賞式は幕を閉じた。2011年のサクラグランプリ受賞作『最強のふたり』が、世界的にも、国内においてもメガヒットの成功を収めたということで、『もうひとりの息子』にも熱い視線が向けられている。【取材・文/山崎伸子】
<第25回東京国際映画祭コンペティション部門受賞結果>
■東京サクラグランプリ:『もうひとりの息子』(フランス:ロレーヌ・レヴィ監督)
■審査員特別賞:『未熟な犯罪者』(韓国:カン・イグァン監督)
■最優秀監督賞:ロレーヌ・レヴィ監督『もうひとりの息子』(フランス)
■最優秀男優賞:ソ・ヨンジュ(韓国:『未熟な犯罪者』)
■最優秀女優賞:ネスリハン・アタギュル(トルコ=ドイツ:『天と地の間のどこか』)
■最優秀芸術貢献賞:『テセウスの船』(インド :パンカジ・クマール撮影監督)
■観客賞:『フラッシュバックメモリーズ 3D』(日本:松江哲明監督)
<natural TIFF部門受賞結果>
TOYOTA Earth Grand Plix:『聖者からの食事』(ベルギー:ヴァレリー・ベルトー、フィリップ・ウィチュス 監督)
審査員特別賞:『ゴミ地球の代償』(イギリス:キャンディダ・ブラディ監督)
<アジアの風部門受賞結果>
■最優秀アジア映画賞:『沈黙の夜』(トルコ:レイス・チェリッキ監督)
■アジア映画賞スペシャル・メンション:『ブワカウ』(フィリピン:ジュン・ロブレス・ラナ監督)、『兵士、その後』(スリランカ:アソカ・ハンダガマ 監督)、『老人ホームを飛びだして』 (中国:チャン・ヤン監督)
<日本映画・ある視点部門受賞結果>
作品賞:『GFP BUNNY タリウム少女のプログラム』(土屋豊監督)