エイミー&ジャスティン、湖の中で交わすキスがロマンティック!
クリント・イーストウッドが、『グラン・トリノ』(08)以来、4年ぶりに主演を務めた『人生の特等席』が現在公開中だ。イーストウッドが演じるのは、メジャーリーグの伝説的なスカウトマンのガス・ロベル役。本作は、ガスの奮闘劇を軸に、彼と娘の親子の絆や、娘の恋のエピソードが展開される。そのラブストーリーのパートでは、娘ミッキー役のエイミー・アダムスと、彼女と恋に落ちるジョニー役のジャスティン・ティンバーレイクの爽やかなラブシーンが実に印象的だ。
エイミー扮する娘ミッキーは、長い間疎遠になっていた父親ガスの助っ人として登場する。ふたりの間には、深いわだかまりがあったが、視力の衰えを隠せなくなったガスのサポートをするうちに、次第に色々なことが見え始めてくる。ジャスティンは、ガスのライバル球団のスカウトマン、ジョニー・フラナガンを演じた。ジョニーは、ミッキーに心惹かれるが、もちろん彼らがそう簡単に結ばれるはずもない。ガスが苦境に立たされていくドラマと並行して、若いふたりもじわじわと距離を縮めていくという流れだ。そのもどかしい展開がたまらなく憎い。
ガスも頑固親父だが、その血を引いたミッキーの強情ぶりも半端ではない。親子は顔を合わせれば言い合いになるし、ミッキーは男性に対しても相当ガードが固いようだ。それでも、紆余曲折を経て、ようやくミッキーが心を開く場所が、ジョニーとふたりきりになった夜の湖だ。まず最初に、湖に飛び込んだのはジョニー。夜の水面が、若いふたりをお膳立てするなか、ようやくミッキーも心を開き、服を脱いで湖へ。こうなったら、もうジョニーの思うつぼだろう。互いに愛を確認し合い、湖に浮かんだままキスを交わす。何ともロマンティックな名シーンである。
本作の監督を務めたのは、長年製作パートナーとして、イーストウッドとタッグを組んできたロバート・ロレンツだ。今回、満を持しての初監督となったが、これまでイーストウッドの近くで映画作りをしてきたロレンツ監督の演出は実に丁寧で、そのクオリティーはお墨付きだ。いぶし銀としてのイーストウッドの魅力はもちろん、エイミーやジャスティンたちのパートのラブストーリーも、きちんとバランス良く織り込んでいる。本当に味わい深い人間ドラマに仕上がっているので、幅広い層に見てもらいたい一作だ。【文/山崎伸子】