男女逆転『大奥』の堺雅人が激白!「漫画原作の主人公を演じるのはとても手強い」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
男女逆転『大奥』の堺雅人が激白!「漫画原作の主人公を演じるのはとても手強い」

インタビュー

男女逆転『大奥』の堺雅人が激白!「漫画原作の主人公を演じるのはとても手強い」

よしながふみの人気コミックの映画化第2弾『大奥 永遠 右衛門佐・綱吉篇』(12月22日公開)で五代将軍の綱吉に仕える主人公・右衛門佐(えもんのすけ)を演じた堺雅人。堺は、現在放映中の連続ドラマ「大奥 誕生 有功・家光篇」の主演も務め、秋から冬にかけて『大奥』という人気作品の顔となった。堺にインタビューし、設定の面白さや、漫画原作のキャラクターを演じたことの率直な感想について聞いた。

舞台は、男子だけがかかる謎の疫病が流行り、男女の役割が逆転したという江戸時代。勇ましい女将軍と、彼女に仕える大奥の男たちとの愛憎劇が描かれる。映画、ドラマのW主演のオファーをもらった時の感想を堺に尋ねると、「大きなお仕事を任せていただいて嬉しいという思いはありましたが、ご期待に応えられるだろうかという不安の方が大きかったです」と、神妙な面持ちで振り返ってくれた。

原作者のよしながふみは堺の知人でもあったので、プレッシャーは計り知れない。「原作ものに出演することは、学校の先生が大切なお子さんをお預かりするような感じで、大事にしたいという思いがあっても、ご家庭の指導どおりにやっていては学校へ行く意味がない。お預かりする以上は、何かそこに乗せないといけない、映像化して良かったという光を当てなければと思いました。もちろん、ベストを尽くしたつもりです」。

これまで何度も原作ものを演じてきた堺だが、特に漫画のキャラクターを演じるのは困難を極めるという。「何でしょうか、このややこしさは。ビジュアルはあるけど、その画は観念なんです。漫画って活字とは違い、観念が実体を持った独特のメディアですよね。実体のふりをした悲しみが描かれていても、それは抽象化された悲しみだから、生身の人間では出せない気がします。でも、熱狂的なファンがいて、読者は生身のものとして認識してしまう危険性がある。本当は良くできた記号なんですが。ちょっとややこしくて、手強いですね」。

真摯なアプローチをすることで知られる堺だが、今回の2つの『大奥』という作品で、ふたりの主人公を演じたことで、いろんなことを考えたようだ。「面白い原作をドラマ化する時、その面白さに尻込みをしてそのままやってしまうと、結果的にその生命を殺してしまうことになりかねない。原作への愛と、自分が今立っている場所での誇りと、どちらが欠けても、生命は死んでしまう。だから、映画、ドラマで、その役を演じることに、誇りを持たなければいけないと思いました」。

男女が逆転しつつも、史実を巧みに取り入れた『大奥』については、「非常に良くできていると思います」と賛辞を送る。意外なことに、違和感はなかったそうだ。「現代がそういうふうかなと。仕事を頑張っている女性と、優しいというのがほめ言葉となっている男性。主張するよりも、協調することを全員が求めている。その一つの表れが草食系というか。男女雇用機会均等法とかをやり、人には優しくと言っていたら、だんだんそういうことになったんじゃないかと。だから、違和感はないです。要潤さんの役(女らしい綱吉の側室・伝兵衛)だってバラエティにいてもおかしくないし、人気が出そう。それをついつい笑っちゃう時点で、よしながワールドに入っているんです」。

そのよしながワールドの魅力あふれるふたりの主人公を演じ切った堺雅人。2作で登場人物がリンクしているが、映画単体でも十分に見応えがある。めくるめく衣装やセットもお正月映画にふさわしい絢爛豪華さなので、是非、堺たち豪華俳優陣が競演した大奥の世界観へ、足を踏み入れてみてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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