なだぎ武『デメキング』インタビュー(2/2)
■「R-1を獲ってから、自分がちょっと変わったんです」
「役作りも、自分に似てるからやりやすいんじゃないかと思ったんですけど、これが逆に難しかった。コントのキャラクターは、まるで自分の中にいない存在をもうひとつ作って演じることが多かったんです。でもそっちの方が、もう一人の自分を作れるからやりやすい。逆にリアルに自分に近い存在を演じるとなったとき、ふっと素のなだぎ武が出てるんじゃないかと思って心配になったり。他の出演者と絡まないので、セリフも少ない(笑)。表情だけで演じるのは難しかったですよ」
似ているだけに難しい、それほど似ているキャラだけに共感できる部分が多かったと語る。
「蜂屋を演じていて、自分の若い頃に戻っていくような気がしてました(笑)。自分のビジョンは明確に出てるのに、どうしたらいいか分からないっていうのは、今の若い子でもいると思うんです。蜂屋は、デメキング、デメキングって人にあんまり言わないし、僕も自分が思ってることを口に出さないタイプだった。でも、R-1を獲ってからちょっと変わったんです」
そして、R-1後、自分自身の中に起きた変化を明かしてくれた。
「蜂屋のようにデメキングっていう存在を信じて戦いたいって思っていたとしたら、それを口に出すことも大事なんだって思うようになったんです。言霊(ことだま)ってあるんだなって。人に言ったらそこに向けてやろうとするし、また、言ったことをどこかで誰かが見ててくれて、それがうまいこと次につながったり。そう思うことがR-1を獲ってから色々あったので、やりたいと思ったことを人に言う勇気も大事だと考えるようになりました」
ネタを考えるときは、まずは自分のおもしろいと思ったものを基本にしているという。“自分らしく”いかなきゃ、と常に考えていると語るなだぎの芸は、なるほど、なだぎ武だけのものだ。自分の信じるものが大事、という蜂屋的な部分は持ち続けたいとも。だが、そこで“人と触れ合う”という、若い頃の自分にはなかった引き出しを開けたとき、自分自身の広がりを感じたというのだ。
将来に関して多感な若者に、こうエールを贈る。
「『デメキング』に出て、今の自分は変わったぞと思うところがあるから、余計に若い頃の気持ちを思い出しました。でもね、若い頃はつっぱねるときはつっぱねて、全然生意気でいいと思うんですよ。経験しないと成長しない。だから是非、若い子に観てもらって、共感して、刺激を受けてもらえたらうれしいですね」【取材・文/成田おり枝】