BBC「フローズン プラネット」エリザベス・ホワイト監督「地球温暖化はペンギンなどに深刻な影響を与えている」

＜インタビュー前半より＞

――地球の温暖化が進み、映像でも氷が3割ぐらい減っているのがわかります。動物に対する深刻な影響はいかがでしょう？

「南極やアラスカでは、明らかにペンギンに非常に大きな影響を与えています。15年前に『Life in the Freezer』(BBCによる1993年のテレビシリーズ)でヒョウアザラシに攻撃されるアデリーペンギンを撮影しましたが、今回も同じ映像が撮りたくて同じ場所に行きました。でも全く氷がなくて、もっと南下しなければいけませんでした。かなり南に下って撮影ができましたが、南極では他の地域よりも2.5倍の早さで温暖化が進んでいるということが本当に実感できました。氷河も撮影しましたが、サウスジョージア島の氷河が解けてしまっていて、30年前よりもずっとずっと下がってしまっていました。これが100年経ったら、どこまで解けてなくなってしまっているのか、それを考えると非常に深刻ですね。また北極圏のアラスカに行くと、普通は鳥たちがパックアイス(海水が凍結してできた氷)の上にいたりするのですが、パフィンやカモメが見られました。これらは氷がなくても大丈夫な鳥で、これまでいなかったものです。間違いなく生態系への変化が起こっています。そこで40年間研究されている方が言っていました。『20年前にはホッキョクグマがいなかった。だが今は氷が溶けてしまって、ホッキョクグマが泳いでここまで来ることができるようになり、秋まで場所を変えなくてはいけない。色々な影響が起こっている』と」

――6・7話はちょっと異質なストーリーですね。動物と人との関係、氷がなくなって便利になった分、そこに人が入ってきて開発したりしている。そのため生態系を壊すことになり、動物たちにとっては良いことではないと思います。ある意味、警鐘を鳴らしていると思うのですが

「私たちは映画製作者としてバランスを取りたいと考えています。なので客観的事実にのみ基づいて、それをストレートに伝える。でも、変化していることは誰も反論できないことです。その事実を伝えています。カナダ、アメリカ、ロシアなどは、これがどうなるか待っている状態だと思います。特にロシアは先んじて北極に国旗を立てました。非常に議論の多いところです。氷が解けて、50年前には通れなかったところが通れるようになって、カナダやアラスカの一部の人たちには、石油やガスの収入ということで考えると非常に大きな利益になっています。でも、その利益にはコストもかかるし、氷が解けているということは、様々なメカニズムによって発生しているので、石油やガス産業だけが悪いということで責めることはできません。私たちは事実を見せることによって、人々にどうですか？と投げかけるスタンスでいます」

――この先のことですが、どんな作品を作っているのか教えてください

「今、2つ動かしています。まず『Wild Arabia』という作品を作りました。たぶん2013年に日本でも放映されるかと思いますが、イギリスではそろそろ放映される予定です。アラビアの色々な国々の自然や風景、人々の暮らしを描いており、私はジンベエザメが石油基地の辺りにたくさんいるところを撮影しました。もう1つは『Seasons』というタイトルで、『プラネットアース』や『フローズン プラネット』と同じような作りになっており、舞台がイギリスです。イギリスの春夏秋冬を追うプロジェクトが2013年夏まで続きます」

気取らず、偉ぶるところも全くなし、こちらの質問に真摯に答えてくれたエリザベス・ホワイト監督。そしてインタビューが終わり、小休止の際に半分冗談で聞いてみた。「BBCなのでナレーションはベネディクト・カンバーバッチでいかがでしょう？日本でもファンが急増しているし、きっとDVDも売れますよ」と。彼女の答えはこうだった。「ベネディクト、ファンタスティック！覚えておくわ。ちょうどナレーターを探しているところなので是非候補にするわ(笑)」と。こういう受け答えも当意即妙でしてくれるところが実に素晴らしい。

地球温暖化の影響をどこよりも受けている北極と南極。今まで見たことのない、そしてもう二度と見ることができないかもしれない両極の姿。本作「フローズン　プラネット」の映像でしっかりとその姿を目に焼き付けてもらいたい。【Movie Walker】