『ドロップ』品川ヒロシ初監督作インタビュー 2/2
■品川ヒロシ、自伝的映画のリアル度を語る!
ヨシモトの人気芸人たちはテレビで見せる“おしゃべりキャラ”とは違い、活字媒体の取材時は驚くほど静かなことが多い。初監督作『ドロップ』を完成させた品川ヒロシもバラエティー番組では見せないマジな一面を感じさせた。自身のヤンキー時代を映画化した初監督作という“照れ”もあるのか、ポツリポツリと話し始めた。
「原作小説では『半分実話』と断って書いてますけど、あまり出来過ぎた話だと読んでる人は『本当かよ』と思うんじゃないかと、小説はかなり抑えて書いたんです。でも、映画は娯楽だし、観に来る人たちはボクじゃなくて俳優たちを観に来るわけだから、思いっきりエンターテイメントにしたんです」
「フィクションとノンフィクションの割合は、50/50」と話す品川だが、登場キャラクターに関しては80年代の狛江市に実在した人物がほとんどのようだ。主人公・信濃川ヒロシ(成宮寛貴)を弟のようにかわいがるとび職のヒデ(上地雄輔)は物語後半のキーマンだが、やはり品川にとって忘れられない実在の人物だという。
「ヒデくんのモデルになった人は本当にいました。ヤンキーになったボクに対しても優しい人でしたね。時間の流れとかはドラマの都合上変えてますけど、ヒデくんのエピソードは実際にあったことなんです」
では、アイドル顔なのに恐ろしく凶暴なカリスマヤンキー・達也(水嶋ヒロ)も実在した?
「えぇ、当時はすごい二枚目だったんです。でも、今は太ってしまって昔の面影は全然ないですけどね(笑)。狛江時代の仲間とは今も付き合いがあって、この間も一緒に飲みにいったんです。当時の仲間やヒデくんのご家族がこの映画を観て喜んでくれたのが、嬉しかったですね」
この日の品川ヒロシは、お笑い番組に出演中の「品川庄司」の品川祐とはずいぶん違った印象を与えた。
「テレビのバラエティー番組で、マジメな話をしても受けませんからね。バラエティー番組でボクに求められているのは“笑い”。ボクがヤンキーやってた頃の自慢話をしても誰も聞いてくれませんよ(苦笑)」
自分の原作小説を映画化できたということより、純粋に初監督を務め終えたことに充実感を感じているという。
「監督はこれからもやっていきたいですね。テレビの収録があるんで週5日の撮影でしたが、スタッフやキャストの協力もあって凄くやりがいを感じたんです。監督としてのスタートが、自分が書いた『ドロップ』だったというのはよかったと思います。でもヤンキー出身だからヤンキー映画が撮れたとは考えてないんです。江戸時代に生まれた人でなくちゃ時代劇を撮れないわけじゃないでしょ? 自分の実体験を切り売りするだけじゃなくて、いろんな作品に挑戦してみたいですね」
インタビュー終了後の別れ際に、「品川家の人たちはもう観た?」と投げ掛けてみた。「はい、うちの家族も観てくれました。うちのオフクロ、『あの頃を思い出して泣けてきちゃったわぁ』なんて言ってましたね」
最後に見せた照れたような表情もまた、バラエティー番組では見せることのない素顔の品川ヒロシだった。【ライター・長野辰次】