ハリウッドで大成功した巨匠なのにアカデミー賞に最も嫌われた男とは?

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ハリウッドで大成功した巨匠なのにアカデミー賞に最も嫌われた男とは?

サスペンスの神と崇められた巨匠アルフレッド・ヒッチコック。最大のヒット作はサスペンススリラー『サイコ』(61)だが、その知られざる製作秘話にスポットを当てた『ヒッチコック』(4月5日公開)に、今、熱い視線が向けられている。

ヒッチコックは、数多くの名作を手がけてきたが、実はアカデミー賞から嫌われた男としても有名なことはご存知だろうか?過去、アカデミー監督賞に5回もノミネートされながら、一度もその栄光を手にしたことがないのだ。

ヒッチコックのアカデミー監督賞ノミネート作品は、ハリウッド進出第1作目の『レベッカ』(40)、『救命艇』(45)、『白い恐怖』(46)、『裏窓』(55)、そして『サイコ』の計5本だ。いずれも評価が高い作品ばかりだが、オスカーの女神は彼に微笑まなかった。特に『レベッカ』は同年の第13回アカデミー作品賞という最高の栄誉に輝いたが、彼の名が呼ばれることはなかった。

ちなみに歴代でアカデミー監督賞を最多受賞しているのはジョン・フォードで、『男の敵』(36)、『怒りの葡萄』(41)、『わが谷は緑なりき』(42)、『静かなる男』 (53)で4度もオスカー像を手にしている。もちろん文句のつけようがないマスターピースばかりではあるが、後世に影響を与えた名匠という意味では、ヒッチコックも同じくらいの功績は残してきたと思われる。

特に、近年は『ノーカントリー』(07)のジョエル&イーサン・コーエン、『スラムドッグ$ミリオネア』(08)のダニー・ボイル、『ハート・ロッカー』(09)のキャスリン・ビグロー、『英国王のスピーチ』(10)のトム・フーパー、『アーティスト』(11)のミシェル・アザナヴィシウスと、初ノミネートで初受賞が続いている。これを見ると、ヒッチコックはあの世でため息をついているではないだろうか。それはさておき、今回の第85回アカデミー賞でも、前哨戦の賞レースを席捲している『アルゴ』(12)のベン・アフレックが監督賞から外されている現状を見ると、改めてアカデミー賞は水ものだと実感する。

本作『ヒッチコック』は、アンソニー・ホプキンスが見事にヒッチコックになりきり、第85回アカデミー賞ではメイクアップ賞にノミネートされている。願わくば、ウィナーとして授賞式に『ヒッチコック』の名が呼ばれるところを見てみたい。【文/山崎伸子】

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