サイコキラー役の武田真治「俳優人生において分岐点になる作品」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
サイコキラー役の武田真治「俳優人生において分岐点になる作品」

インタビュー

サイコキラー役の武田真治「俳優人生において分岐点になる作品」

俳優、アーティストとして硬派な姿勢を貫きながら、バラエティー番組では人間味あふれる素顔を見せ、マルチなエンタテインメントのシーンで活躍してきた武田真治。そんな彼が、日本の海外ミステリーのランキングで史上初の三冠に輝いた、デイヴィッド・ゴードンのミステリー小説の映画化『二流小説家 シリアリスト』(6月15日公開)に出演。演じたのは猟奇殺人鬼の死刑囚・呉井大悟役だ。武田にインタビューし、サイコキラーの役作りについて聞いた。

本作の主人公は、上川隆也扮する二流小説家・赤羽一兵だ。死刑囚の呉井から、告白本の執筆依頼を受けた赤羽は、呉井の熱狂的なファンの女性3人を取材するが、その後、3人が12年前の呉井と同じ手口で次々と殺されていく。武田は呉井役について、「猟奇殺人犯の役ですが、セリフでは殺人について語らず、芸術についてべらべらしゃべる。今まで見たことのない独特のキャラクターだと思いました」と感想を語った。

演じるうえで難しかった点は、猟奇性をどこまで見せるかというさじ加減だ。「甘美な芸術を純粋に語りながら、そのなかに猟奇性を見せなければいけなくて。それをふわっとだったり、鋭くだったりと調整しながら演じていくんです。彼が猟奇殺人犯であることを感じさせながら、実は犯人じゃないのかもしれないというミステリー映画ならではの両伏線も匂わせていく。そのバランスの難しさがありました」。

上川隆也とは本作で初共演となった。最初の共演シーンは、呉井と赤羽が初めて対面するシーンだ。「ドアが開き、赤羽の前に初めて登場する時は、ドアから顔を水平に出し、にこやかに入って来てと、監督に言われました。また、刑務官の机に一度は腰かけてほしいけど、ドデンと居座って怒られるのではなく、素早く身をこなし、それを誰が見ても魅力的に思えるような感じでやってほしいと。監督と僕とで、上川さんから『何だ、これ!?』とびっくりするような表情を引き出せたら良いね、と言っていました」。

彼は、撮影が進むにつれて、上川から刺激を受けていったようだ。「この映画は、台本以上のことをしないといけないし、ミステリーしての緩急ももっと掘り下げていきたいと、上川さんと話しました。そういうところでお互いに協力し合っていけたと思います」。

武田は、常に役にのめり込むタイプだという。「役に入り込んで、取り憑かれたようになっていきます。でも、それはエンタテインメント全体に言えることで、僕はサックスを吹く時も、バラエティーで馬鹿をやる時も、取り憑かれたようにやらないと意味がないと思っています。でも、俳優は時折、間違った方向に穴を掘ってしまうので、それは絶対に避けなければいけない。だから、その冷静な自分を保つために、上川さんによく『今の僕、間違っていないですか?』と確認したりしていました」。

上川と互いに熱い思いを引き出し合って臨んだ本作は、武田にとって特別な映画となったようだ。「自分の俳優人生において、分岐点になる作品にしなければいけないと思いました。呉井役はそれくらい、すごく演じ甲斐のある役でした」。

また、武田の口からは、それぞれの仕事へのスタンスの話も飛び出した。「表面的な部分で言えば、馬鹿なことをやっていても、サックスで格好良いことをしていたら良いかなと思ったりもします。また、映画で猟奇殺人鬼を演じていても、バラエティーでみんなの笑顔を作るための仕事をしている瞬間があるから良いかとか。特に『めちゃイケ』は18年もやっています。僕は17歳で家を出ていますから、親よりも長い時間を過ごしているわけで、やっぱり居心地が良いですね。でも、その3つをやることで、精神的にもバランスが取れている気がします」。

彼が演じた呉井大悟はつかみどころのない多面的なキャラクターで、狂気だけではなく、カリスマ性や妖艶な色気さえ漂ってくる。それは、いろんな分野でキャリアを積み上げてきた今の武田真治が演じたからこそ成し得たキャラクターなのだと、取材後に実感した。【取材・文/山崎伸子】

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