東京国際映画祭、日本映画の無冠にチェン・カイコーが「来年こそは!」と叱咤激励
第26回東京国際映画祭が10月25日に閉幕。コンペティション最高賞にあたる東京サクラグランプリには、スウェーデンの青春映画『ウィ・アー・ザ・ベスト!』が輝いた。クロージングセレモニーの後には、TOHOシネマズ六本木ヒルズで受賞者会見と審査委員による総評が行われ、グランプリを獲得したルーカス・ムーディソン監督が「ユーモアがあって、笑い飛ばすことのできる映画。そこが評価されたのでは」と自己分析。原作者でもある愛妻ココ・ムーディソンを隣に「私たちは似た者同士」と笑顔を見せるなど、夫婦愛にあふれた会見となった。
『ウィ・アー・ザ・ベスト!』は、思春期の衝動に駆られて、パンクバンドを始めた女子中学生の弾けるような日々を描く物語。意欲的な作品が集うなか、見事トロフィーを手にしたムーディソン監督は「妻と私は似た者同士。24時間を過ごして、一緒にプロジェクトを共有するのも自然なことだった。ココは私の人生の専門家で、私はココの人生の専門家」と夫婦の相性の良さが、グランプリにつながった様子だ。
審査委員長を務めたチェン・カイコーは、「審査員の5人、家族のように過ごすことができた」と充実の審査を述懐。さらには「映画というものが平和や愛、対話を代表するものだと確信できた」、審査委員の一人である寺島しのぶも「映画というものを改めて見つめなおす期間になった」と審査を通して得た刺激を語った。
また、「満場一致で決まった」という『ウィ・アー・ザ・ベスト!』の受賞理由についてカイコーは「10代の子供たちが喜び、悲しみ、失望しながら成長していく姿が描かれている。これは誰もが経験してきているもの。大人たちが一番、共感できるものだった」と評価。コンペティション部門に選出された日本映画『ほとりの朔子』『捨てがたき人々』は無冠に終わったが、カイコーは「来年こそは日本映画がグランプリを獲ってほしい」と叱咤激励。寺島も「日本映画が評価されなかったのは残念。今度はコンペに選ばれるような作品に出演したい」と女優としての意欲を見せていた。
日本映画スプラッシュ部門を制したのは、坂本あゆみ監督作『FORMA』だ。授賞式では、感極まって涙を流した坂本監督だが、改めて「6年越しの作品。私が(やったこととして)言えるのは、諦めなかったこと」と心を込めてコメント。各国の映画人それぞれが、晴れやかな笑顔と創作への熱意を見せ、会見を締めくくった。【取材・文/成田おり枝】