アニメーション監督・大友克洋が紫綬褒章を受章!「転機となった作品は『AKIRA』」
『AKIRA』(88)や『スチームボーイ』(03)など数々の傑作を作り上げ、日本のみならず世界のエンタテインメントに影響を与えてきた漫画家・アニメーション監督の大友克洋が、この度、紫綬褒章を受章。都内で受賞会見が行われ、大友監督が出席。「そんな歳になったのかな」と照れ笑いを浮かべつつ、これまでの創作活動を振り返ってくれた。
受章理由は、「漫画家、アニメーション映画監督として長年にわたり、圧倒的な画力(描写)と構図、物語の構築力、鋭い映像感覚をもとに、優れた作品を数多く発表し、国際的な注目を集めるなど、わが国芸術文化の発展に大きく貢献したこと」とのこと。紫綬褒章に関しては、アニメーション分野では、アート系で久里洋二、古川タク、映画(長編系)では、高畑勲が受章しているのみ。大友監督は、高畑監督(平成10年)以来の受章となった。
今年で漫画家デビュー40周年を迎えた大友監督だが、「その時に自分が面白いと思ったものに取り組んできた」と40年を述懐。さらに「作品を発表する時は、その時の自分なりの旬のものでありたいと思っている。描くものが19世紀であれ、江戸時代であれ、その時の自分の考え方や時代が反映されていると思う」と力強く話してくれた。
転機となった作品として挙げたのは、SFコミック&アニメの金字塔『AKIRA』だ。「初めての長い連載だった。海外にも出ていったし、アニメーションも自分で監督をした。あれは大きかった」とコメント。『AKIRA』では2020年に東京オリンピックが開催されることになっており、「予言が的中!?」とも話題になったが、記者からの「今の時代をどのように見ているか?」との質問には、「東京オリンピックも決まったので、経済的にも少しずつ明るくなるのかなという漠然とした気持ちはあるけれど、浮かれていてもしょうがない。自分なりの考え、生き方で、新しい時代に向けて作品を作っていきたい」と思いを明かしてくれた。
また、「アニメーション、漫画の業界もピークを過ぎてきたような気がする。若い人が出てきていない」と業界に対して、不安を投げかける一幕も。「ビッグなヒット作はあるけれど、もっと作品的に充実したものが出てくるべき」と話し、「アニメも漫画も昔は日陰者みたいな感じがあって。それだけに好きなことができた。今は業界が大きくなって、新しい、変わったことをする人が入りづらくなってきた」と分析。
続けて「業界が大きくなったのなら、新しい、変わった人にも光を当てるべき」と業界と若い世代にエール。さらには「このような賞をもらったので、是非また撮らせてほしい」と笑顔で自身の意欲も明かしてくれた。【取材・文/成田おり枝】