『ウォーキング with ダイナソー』の監督が語る、主人公が草食恐竜である必然的な理由とは?
いまから7000万年前のアラスカを舞台に、その時代に生きた恐竜たちの姿を綿密なリサーチのもと、実写とCGを合成した驚異的な映像で見せる『ウォーキング with ダイナソー』(12月20日公開)。『アース』(07)などネイチャー・ドキュメンタリー作品で知られるBBC EARTHフィルムズの二ール・ナイチンゲール監督に、その映像の秘密や作品に対する思いを聞くべく直撃した。
監督はなぜ今回、恐竜を主人公にしたストーリー性のある作品を手がけようと思ったのだろう。「まずは7000万年前の世界にみなさんをお連れし、恐竜を好きになってほしいと思ったんです。そのためには映画は最適な手段だったし、強いストーリーと感情移入できるようなキャラクターがいなくてはダメだと思って、今回のような作品になったんです」。
作品イメージはできたものの、いかにして映像として完成させるかは困難を極めたという。「アラスカへ実写映像を撮影しに行ったときは、プラスチックのパイプで実物大の恐竜の大きさを再現しながら撮影しました。必死に想像力を働かせて作り上げたので、初めて実写とCGを合成させた映像を見たときは、マジカルな瞬間でした」。
物語の主人公のパッチはパキリノサウルスという、トリケラトプスに似た恐竜だが、日本ではよほどの恐竜好きでない限り、あまり聞いたことのない種類だ。「みんなを驚かせたかったんです。みんなが知らないような恐竜を選んで、その赤ん坊の時代から描くことで、彼の成長を応援してほしかった。でも、草食恐竜を選んだ理由は単純です。だって、主人公が他の恐竜をガツガツ食べてたら、感情移入できないどころか、引いてしまうでしょ(笑)」
実在した恐竜を、最新の3D技術と最新の学説で蘇らせた本作。恐竜にはカラフルな模様があったことや、羽毛の生えたものもいたというのは近年になって明らかになったことで、恐竜の生態はまだ謎に包まれた部分が少なくない。「ジグソーパズルに例えると、パーツのないところがたくさんあるんです。探偵ではないですが、それを探し出すという意味でも作品作りは楽しかったですよ」。
3Dによって、まるで恐竜の世界に入り込んだかのような錯覚さえ覚えるような映像が満載。小さい恐竜の成長を通して、古代へのロマンを感じつつ楽しんでほしい作品だ。【取材・文/トライワークス】